日産、次世代車シフトで系列解体 カルソニック売却発表
トヨタと別の道
日産自動車は22日、系列最大の自動車部品メーカー、カルソニックカンセイを米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に売却すると正式発表した。仏ルノーから1999年に日産に乗り込んで以来、「系列解体」の大なたを振るうカルロス・ゴーン社長が中核部品メーカーまで手放す。自動運転や電気自動車(EV)の技術開発に向けた決断は、系列とともに新技術へと向かうトヨタ自動車と一線を画している。
総額5000億円
KKR傘下の会社を通じて2017年2月下旬からカルソニックカンセイ株に対しTOB(株式公開買い付け)を始める。日産が持つ41%を含めた全株の取得を目指す。買い付け価格は1株当たり1860円で全株式を取得する場合の買収総額は4983億円。KKRによる日本での投資額としては14年に傘下に収めたパナソニックヘルスケア(約1650億円)を抜き過去最大になる。
カルソニックカンセイは日産の系列でも中核の中の中核企業といっていい。大量の部品を納めるだけではない。モータースポーツにも「CALSONIC」を冠した車両が参戦する。グループの黒子であると同時に主役であり、技術力と存在感の双方を兼ね備える。
ただEVや自動運転が普及すれば魅力が徐々に薄れるのも事実だ。EVの普及は得意とする熱交換器や排気部品の市場縮小につながる。日産は何社もの同業にカルソニック株の売却を持ち掛けたが断られ、売り先はなかなか決まらなかった。
「サプライヤーの潜在能力を生かす巧拙が競争力を左右する」。日産の西川広人共同最高経営責任者(CEO)は話す。カルソニックを手放す一方、自動運転をにらんで独ボッシュや独コンチネンタルなど「メガサプライヤー」と呼ばれる欧米部品大手との連携を強める方針。彼らの先端技術に日産のノウハウを加え、効率的で競争力のあるクルマづくりを目指す。
日産向け売上高比率が8割超のカルソニックと対照的なのがトヨタ自動車系部品会社だ。デンソーはトヨタグループ以外への比率が半分を超える。トヨタは他流試合も奨励して系列メーカーの収益力を高め、自動運転など先進分野への投資を促そうとしている。
かつてのトヨタはグループ内で利害対立が表面化することもあったが、近年は連携を強めようとする動きが目立つ。愛知県蒲郡市にグループの研修施設を置き、各社の新任役員が互いの歴史を学ぶ機会を設ける。12月に新設するEVの企画開発組織にはデンソーなど主要3社の社員も加わる。
世界の潮流
系列を崩し、幅広いサプライヤーの技術を活用する日産の選択は世界の自動車メーカーの潮流だ。サプライヤーが供給するモジュールの組み立てに注力すればコストは下がる。ただ部材が共通になることで似たようなクルマを生みだしてしまわないかという懸念は常にある。欧米流のクルマづくりか、グループ連携の強化か。両社の選択の成否は勝ち残りに向けた競争力に直結しそうだ。(白石武志、奥平和行、川上穣)