「武蔵」元乗組員ら感慨 「よく見つけてくれた」
米マイクロソフトの共同創業者で資産家のポール・アレン氏らが、フィリピンの海底で発見した沈没艦は、公開された船体の映像などから太平洋戦争で米軍に撃沈された旧日本軍の戦艦武蔵の可能性が高い。「よく見つけてくれた」。レイテ沖海戦から70年余り。元乗組員らは驚きとともに感慨を口にしている。
武蔵(全長263メートル、排水量約6万4千トン)は、連合国軍のレイテ島上陸部隊への攻撃に向かう途中、1944年10月24日、シブヤン海で米軍から約20発の魚雷などを受けて撃沈した。出撃時の2399人の乗組員のうち、艦長を含む1023人が犠牲となった。
撃沈された場所は戦闘記録などから判明しているが、実際に沈んでいる場所は確認されていなかった。アレン氏らは、武蔵の船体探索を8年以上前から計画。海底の地形や潮流などを分析し、沈没地点を絞り込んだ。潜水調査機器を使い、今月に入り、シブヤン海の水深約千メートル地点で船体を発見した。
武蔵の建造時から関わり、大砲などの電気系統を担当した千葉県に住む中島茂さん(94)は「よく千メートルもの深い海で探し出したものだ。自分が乗っていた船を見つけてくれて感謝の気持ちでいっぱい」と語った。
沈没時は上官の命令を受けて海に脱出し、武蔵が艦首部分から沈んでいくのを眺めた。公開された映像でも当時の様子をとどめている艦首を見て、「沈む前には爆発も起きたが、艦首と離れた火薬庫付近だったので、そのまま残ったのだろう」と話した。
約8カ月間にわたり砲術士などを務めた長崎県南島原市の原口静彦さん(93)は「見つかることはないと思っていたので、びっくりした。武蔵が何か語り掛けるものがあったのでは。乗組員の魂も思い出してほしいと呼び掛けているのだろう」と語った。〔共同〕