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欧州メディア・グーグル10年戦争 IT企業と連携、不可欠に

藤村 厚夫(スマートニュース執行役員)

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ニュースを知りたいと思った際に消費者は何を選択するだろう? 今、その選択肢は「テレビ」から「インターネット」へと移ろうとしている。

毎年、ロイターが世界12カ国で行っているニュースに関する消費者調査によると、テレビが上位の国は6カ国。ネットも同じく6カ国。ネット経由がかろうじて次点の国もあり、世の趨勢はネット経由へと傾いている。「印刷」を選択する比率は、どの国でもごくわずかだ。

では、ネット経由にはどのような要素が含まれているのだろうか。同調査では12カ国でばらつきがあるものの、「特定メディア」を指名したアクセスは、押しなべて小さい。日本ではわずか15%。一方で「検索」経由は5割を超える。「ヤフー」や「スマートニュース」などの「アグリゲータ」(情報収集者)経由は3割弱。欧州でも、検索はイタリアの7割弱を筆頭に大きな存在感を見せている。

検索の影響力が大きい欧州では、グーグルと新聞社らメディア陣営との間で、10年近い争いが繰り広げられている。

グーグルが検索技術を用いて最新ニュースの概要と元記事へのリンクを表示する「グーグルニュース」を公開したのが2006年。同年にはベルギーの出版団体がグーグルに対して、記事へのリンクの不法利用について訴えた。これは、12年に和解が成立した。同じくフランスでも13年に和解が成立している。

13年にはドイツで検索結果に使用料を課す法案が成立した。だが、この法律では手ぬるいとばかりに、翌年に大手新聞社らがニュース記事抜粋の利用料支払いを求めて独自の法的手続きをとった。同じ年、ポルトガルでも業界団体がグーグルに対し補償金の支払いを求めた。

さらに、14年にスペインで検索結果の表示に対し「請求を義務づける」という厳しい法律が成立した。この法律では、グーグルと争う気のないメディアも、同社にコンテンツ使用料を請求しなければならない。いわゆる"グーグル税"だ。

このように、欧州ではメディア業界がタッグを組み、ロビー活動を繰り広げるなどしてグーグルが稼ぐ広告収入からの分配や記事の抜粋・引用によってメディアが失ったと算定する収入の補償を求める動きが続いた。

グーグルはこうした強硬姿勢にどう対処しているだろうか。ドイツではニュース記事の要約表示を止め、シンプルな検索結果のみとした。スペインではグーグルニュース自体を閉鎖した。

この結果、ドイツでは新聞社らサイトへのアクセスが激減した。これに音を上げたメディア企業との間で、和解の動きが進んだ。スペインでも同様にメディアへのアクセスが下落し、メディアと消費者に大きな不利益をもたらしているとする業界団体の報告書が最近になり提出され、深刻な混乱が起きている。

一方、ベルギーやフランスではグーグルは和解を選択した。さらに4月には、従来のやり方を反省するコメントとともに、1億5000万ユーロを投じて遅れているメディアのデジタル化支援の施策を講じる計画を発表した。

分かってきたことは、グーグルに厳しい欧州メディア陣営でさえも、グーグルのようなテクノロジー企業なくしては、デジタル時代の成功はままならないという事実だ。一方的な勝者はありえない時代がやってきている。

[日経MJ2015年9月7日付]

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