中国資本 受け入れる利点
SmartTimes C Channel代表取締役 森川亮氏
今回は中国を含めたアジアの話題です。当社は今年、中国最大のファンドであるレジェンドキャピタルマネジメントからの出資を受け中国で本格的に事業展開することを決めました。
コスメ系動画配信の海外展開は2016年から取り組んでいます。まず台湾とタイで現地パートナーと提携、ジョイントベンチャー(JV)を設立して営業を開始。動画の再生数は順調に伸び、現在、オンラインのみならず街のサイネージやコンビニ、タクシーなどでも動画が配信されています。更にインドネシアと韓国にも進出しました。
LINE時代同様、台湾とタイは親日の方々が多く、比較的日本のコンテンツへのニーズが高かったこともあり、ビジネスが進めやすい状況でした。タイは肌の色もファッションの好みも日本とは異なるので、ある程度ローカライズ(現地化)を進めていますが、日本的な文化を事業化することについては、さほど違和感はありませんでした。
一方、韓国は状況が異なります。私自身は前職が韓国系の企業で働いていたので人脈も理解も深いのですが、日本の文化に対する抵抗という面が多少あり、日本のコンテンツを展開することの難易度が高く、結果、現地化の比率を高めざるをえない状況です。
インドネシアは親日の方々が多い状況ですが、宗教も文化も日本とかなり異なるため、こちらもローカライズが必要でした。ファッションやメイクはもちろんのこと、食についても宗教的な意味合いから一定の現地仕様が求められました。
とはいっても、全体的には、どの国でも日本企業と提携し事業展開したいという意向が感じられ、超えがたいハードルがあるという印象はありません。
ですが、中国はまったく異なります。2年ほど前からパートナー探しや単独での展開を模索したのですが、これがなかなか難しい。難航した最も大きな理由は、中国のIT(情報技術)産業の経営者の多くが「日本は遅れており、学ぶべきところがない」と思っている点でした。
確かに技術面でも市場規模の面でも中国は日本を超えていて、上海や北京のIT経営者は「何か一緒にやろう」と言ってはくれません。そこで今回、中国のファンドの資本を入れ、中国のインサイダーになることで中国パートナーと一緒に成長しようという方法を選びました。
もちろん中国市場でナンバーワンとなるのは難しいかもしれません。ただ現状の市場サイズだと10位以内に入れば、日本の売り上げを超えることになります。
テクノロジーではなく、コンテンツやメディア、EC分野では、間違いなく中国には、ある一定層の日本好きマーケットがあります。今後、中国企業の投資を受けて中国市場に参入する企業は増えるのではないでしょうか。
[日経産業新聞2018年7月30日付]