中国主導のインフラ銀にどう向き合うか
中国が主導する国際的な金融機関「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)の設立準備が進んでいる。出資を呼びかけられている日本は慎重な構えだが、巨大なアジアのインフラ需要にどう対応するのか、日本も問われる。
年内発足を目指すAIIBについて中国は、アジアのインフラ整備に必要な資金の提供が役割、としている。域内の20前後の国々と話し合いを進めているようだ。
6月には財政省の担当者が来日し日本にも出資を要請した。これに対し日本は、アジア開発銀行(ADB)と役割が重複する、などとして消極的な姿勢だ。
確かにAIIBには疑問点がある。ADBとの関係について中国は「競合でなく補完」としているが、「貧困の削減」という明確な理念を掲げるADBに比べAIIBの理念ははっきりしない。
環境や人権、地域コミュニティーへの目配り、非政府組織(NGO)との連携など、ADBが蓄えてきたノウハウを生かしていくのかどうかも不透明だ。地域の産業育成や雇用促進につながらないひも付き援助になったり、汚職の広がりを招いたりしないか心配だ。
中国の本当の狙いは国際通貨基金(IMF)と世界銀行を軸とする米国主導の国際金融秩序を揺さぶることではないか、といった観測も根強くある。
当初日本や米国、インドに声をかけなかったことや、並行してロシアなど主要新興国とBRICS銀行の設立準備を進めていることが、警戒を引き起こしてきた。
世銀やADBの有数の借り入れ国である中国が、新たな国際金融機関を設けることへの違和感を指摘する声もある。
とはいえ、ADBが2020年までに8兆ドルと推計するアジアのインフラ資金需要は、既存の国際金融機関ではまかない切れないのも事実だ。資金不足に悩む途上国はAIIBに期待している。
環境や人権などを無視した開発を助長しないよう促すなど、AIIBへの建設的な関与を日本は考えるべきだ。
ADBがアジアの資金需要に応じきれない一因は、ADBの増資に米欧が後ろ向きなことだ。中国がBRICS銀やAIIB設立を目指すのは、ADBなど既存の国際金融機関での発言権の拡大が思うように進まないからでもある。ADBの融資能力の強化に向けた努力も、日本は求められる。