布マスクでも拡散防止効果、スパコン「富岳」で計算
理化学研究所は24日、世界最高の計算速度を誇るスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」を使い、マスクによる飛沫の拡散防止効果などを計算した結果を公表した。不織布、ポリエステル、綿を使ったマスクの防止効果の違いを探ると、不織布が最も高かった。ただ他のマスクでも約8割の飛沫を防げ、新型コロナウイルスの対策に有効だとしている。
富岳では不織布やポリエステル、綿のマスクを着用した感染者が、せきをした際を想定したシミュレーション(模擬実験)をした。通気性は綿、ポリエステル、不織布の順に高い。
不織布の場合、せきによって出た飛沫が透過することはほぼなかった。ただ、直径20マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル以下の小さな飛沫については、マスクと顔のすき間から1割以上漏れ出ていた。ポリエステルや綿の場合、繊維のすき間が比較的大きいため、小さな飛沫が最大4割も透過する場合があった。
ただ飛沫の体積でみると、どの素材でも約8割の飛沫の飛散を防いだという。理研の坪倉誠チームリーダーは「暑い季節にマスクを外すのが最も危ない。性能の低い布マスクでもつけることが大事」と語る。
研究チームはフェースシールドの効果についてもシミュレーションで調べた。直径50マイクロメートル以上の大きな飛沫は、フェースシールドに付着して拡散を防ぐ効果があった。ただ、直径20マイクロメートル以下の小さな飛沫は飛びやすいため、フェースシールドと顔のすき間から拡散していた。
研究チームは新型コロナでイベントの開催を制限されている多目的ホールでの飛沫拡散のシミュレーションも実施した。川崎市にある1万4000平方メートルの多目的ホールで2千人が着席した状態を想定した。
多目的ホールは客席の下部にエアコンが取り付けられている。換気を考えた設計になっているため、仮に汚れた空気があっても客席では数分、全体では10分で入れ替わった。観客がマスクをつけて間を空けて座れば、リスクはほぼないとしている。
舞台上の演者の歌唱による影響を探るため、せきを2度した時を見立てたシミュレーションも実施した。演者から出た小さな飛沫は2~3メートル飛散し、エアコンの風で拡散した。そのため、観客は舞台から一定の距離を取って座ることが望ましいとしている。
坪倉チームリーダーは「観客を半分程度にしてマスク着用を徹底し、クラスターが発生しないかどうかを見ながら徐々に制限を緩めていくべきだろう」と語る。