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新iPad Pro実地検証 大画面とペンシルで使用感に磨き

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日経トレンディネット

アップルが2018年モデルの「iPad Pro」を2018年11月7日に発売した。新しいiPad Proはクリエーターを特に意識してスペックや機能に磨きをかけたと言われている。実際、筆者の周りにも仕事にiPad Proを活用しているイラストレーターやデザイナー、音楽や映像コンテンツの制作にかかわるクリエーターがたくさんいる。

だからといって、新しいiPad Proが一般のユーザーに縁遠いデバイスというわけでは全くない。パソコンの代わりとして、ビジネスパーソンに役立つツールにもなるだろう。そこでこの記事では新しいiPad Proをさまざまな角度からじっくりと検証してみたい。

18年版iPad Proの見どころは?

まずは、18年版iPad Proの基本スペックを確認しておこう。頭脳にあたるプロセッサーは新開発の「A12X Bionic」。9月に発売されたiPhone XS/XS Maxが載せているチップ「A12 Bionic」をiPad向けに最適化した同世代の兄弟のようなプロセッサーだ。「毎秒5兆の演算処理に対応している」というすごさはなかなか想像しづらいが、一般的なアプリの起動と処理はもちろん、App Storeで入手できるAR(拡張現実)ゲームなどもサクサク動く処理能力の高さは、使ってみるとすぐに実感できるだろう。

CPUは8コア構成で、4つの高速コアと4つの高効率コアという内訳。17年発売のiPad Pro/10.5インチに搭載されている「A10X Fusion」と比べて、マルチコア性能比でパフォーマンスは90%向上しているという。グラフィックスの処理性能も約2倍。ビジネスシーンからは少し脱線してしまうが、仕事の息抜きに楽しむゲームも快適に遊べる。

さらにiPhone XS/XS Max/XRで一段と強化されたことが話題を呼んだ、機械学習専用のプロセッサー「ニューラルエンジン」も搭載しており、リアルタイム処理の演算を速く、賢くこなせる。ホームボタンでの指紋認証「Touch ID」をなくす代わりに、フロント側のTrueDepthカメラを使った顔認証機能「Face ID」にiPadとして初めて対応したのも特徴だ。

カメラはフロント側のTrueDepthカメラが700万画素で、ポートレートモードを搭載。メインカメラは1200万画素で4K動画を撮影できる。

ベゼルが細くなり画面が大きくなった

映像・サウンド関連では誰もがディスプレーに注目するだろう。従来モデルに搭載されていたホームボタン「Touch ID」を省くことで、これまでとは見違えるほどベゼルが狭くなってスマートな外観に生まれ変わった。従来モデルに比べると、12.9インチのモデルは画面サイズはそのままに本体がよりコンパクトになっている。11インチのモデルは10.5インチのiPad Proと同じきょう体サイズながら画面が大きくなった。

12.9インチと11インチのiPad Proを並べてみるとサイズの違いがよく分かる。本体の厚さはどちらも5.9mmでiPad史上最薄。質量は12.9インチのWi-Fi専用モデルが631g、セルラーモデルがわずかに重く633g、11インチのモデルが468gだ。軽くて薄い。側面はiPhone SEのようにエッジがストンと落ちたスクウェア形状になり、従来よりも手に持ちやすくなったと感じる。

パネルは液晶を使った最新世代の「Liquid Retinaディスプレイ」である。アップルの技術仕様にHDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)に関する記載はないが、色鮮やかで明暗の階調感も豊かな映像は十分に高品位だ。ベゼルが狭いうえに黒いので、特に暗いシーンの多い映画やドラマを視聴すると没入感が得られるのがよい。

端子も変更。12年発売のiPhone 5、第4世代iPad、初代iPad mini以来採用されてきたアップル独自の端子「Lightning」から思い切ってUSB Type-Cに切り替えた。パッケージに付属する充電器とケーブルを使えば急速充電もできる。どちらのサイズのiPad Proも、公式に発表されている内蔵バッテリーによる最大連続駆動は約10時間。一般的なノートパソコンに肩を並べるパフォーマンスだ。

買うならWi-Fi+Cellurarモデル

新しいiPad Proは前述のとおり、12.9インチと11インチの2機種がある。それぞれカラーバリエーションはシルバーとスペースグレイの2色、ストレージは64GB/256GB/512GB/1TBの4サイズ、通信はWi-Fi専用かモバイル通信ができるセルラーモデルのいずれかを選ぶ。

iPad Proにノートパソコンに代わる便利さや機動力を求めるなら、迷わずにセルラーモデルを選ぶべきだと思う。筆者は外出先で記事を書くことも多いため、予約受付の開始日深夜にApple Storeで12.9インチのSIMフリー版を注文した。セルラーモデルに毎月1000円前後で3GB程度のデータ通信ができる格安SIMを装着すれば、いつでもどこでもネットにつながるパソコンのような使い方ができるからだ。ネットにつなぐにはスマホのテザリングを使う方法もあるが、毎度スマホのテザリング機能をオンにする手間を省けるうえ、Wi-Fiルーターを別途契約するよりもランニングコストが低く抑えられるだろう。

セルラーモデルはDSDS(Dual SIM Dual Stanby)対応で、nano SIMカードだけでなく、遠隔で情報を書き換えられる組み込み型SIM「eSIM」を併用できるという。海外ではいくつかの事業者がサポートしているようだ。海外に出張、または旅行にでかけた際にeSIM対応のキャリアのサービスに直に接続できればSIMカードを用意する手間も省けそうだ。機会があれば試してみたい。

iPad Proの使い勝手を強化するアクセサリーも新しくなった。あると便利なのは専用キーボードの「Smart Keyboard Folio」「Apple Pencil」「USB-C SDカードリーダー」だろう。ただ、もし外出中にiPadで音楽を聴きたいと思っていて、かつイヤホン/ヘッドホンは3.5mmアナログ有線接続のものを使いたいと考えているなら要注意だ。詳しくは後述するが、新しいiPad ProにはiPhone同様、アナログイヤホンジャックがない。従来から使っている3.5mmアナログ有線接続のイヤホンを使うには、USB Type-C端子に3.5mmヘッドホンジャックアダプターを挿して接続しなければならない。アダプターはiPad Proのパッケージには同こんされないので、Apple Storeで1000円で購入しよう。

「Smart Keyboard Folio」は不安定さが解消

新しくなったアクセサリーのうち、iPad Proの専用カバーを兼ねる「Smart Keyboard Folio」は見事なアイテムだと思う。キーボードの打鍵感は従来モデルからそれほど変わっていないが、筆者がかねてからウィークポイントと感じていたiPad背面の保護がしっかりできるようになっている。本体側面の磁力だけでつながっていることの不安定さも解消された。

画面を立てるときのポジションも2段階で調整可能だ。奥側にセットすると画面の角度が90度に近付くので、デスクに置いてタイピングするときにいい。手前側のポジションは、iPad Proを膝に乗せて原稿を書くときにちょうど良かった。従来のSmart Keyboardはキーボード側も途中で折れ曲がるデザインだったが、今度のモデルは1枚板のスレート状になっている。だから膝に乗せてタイピングしても安定するのだろう。

2つのアプリを同時に起動、表示する「Split View」機能を使うと、iPad Proでの作業がパソコンの感覚により近づいてくるのでお勧めだ。このSplit View機能の醍醐味はiPadの画面が大きくなるほど有効。その意味でも、2018年版で大きい画面のiPad Proを選びやすくなったことは合理的だし、支持したい。テレビ会議などで使えるマルチユーザーでのFaceTime通信も快適性がアップしそうだ。

なお、iPad Proのディスプレーは反射防止コーティングがされているので、光の映り込みはさほど気にならない。耐久性アップ、ヨゴレ防止を徹底するなら保護フィルムを貼ってもいい。

書きやすくなった新世代の「Apple Pencil」

Apple Pencilは軽快になった。ペン先の追従性と書き味の滑らかさは初代Apple Pencilの性能を踏襲しているが、表面の質感がマットになり、側面の一部がフラットな形になったことでグリップ感が安定した。

タッチセンサーを内蔵したので、「メモ」アプリに書き込んでいる途中でペンと消しゴムを瞬時に切り替えたり、カラーパレットの表示など特定の機能を設定から割り当てられたりするのも便利な点。筆者は、原稿を書き始める前にメモアプリで草稿をまとめることがあるので、ペン書きの作業効率を高めるこれらの機能は大歓迎だ。試してみるとセンサーの反応も良い。

従来のApple PencilにはLightning端子が付いており、充電時にはiPadの端子に直挿しするかLightningケーブルを使って接続する仕様だったが、新しいiPad Proでは側面にあるマグネットに装着すればワイヤレスで充電できる。iPad ProとApple Pencilを別々に持ち歩かなくていいのと併せて一石二鳥だ。ただ、マグネットでの装着はカバンに入れている間に外れてしまうと怖い。このため、筆者は結局別のポケットに分けて持ち歩くことになりそうだ。

USB Type-C端子でiPhoneやワイヤレスイヤホンに充電

新しいiPad Proは端子がUSB Type-Cになったことで、さまざまなデバイスをつないで便利に使えそうだ。デジカメで撮影した写真を確認するのにもいい。筆者はデジカメの画像をiPad Proで見るため、「USB-C SDカードリーダー」を購入した。

Apple Storeで販売されている一方の端子がUSB Type-C、もう一方の端子がLightningというケーブルを使えば、iPad ProからiPhoneの充電ができる。iPad Proには両端がUSB Type-Cのケーブルが同こんされていて、これを使えば最近増えてきたUSB Type-Cで充電する完全ワイヤレスイヤホンやAndroidスマホも充電できた。さらにアップル純正の「USB-C Digital AV Multiportアダプタ」を使えば、単体ではインターネットに接続できないホームプロジェクターにiPad ProをつないでNetflixやAmazonプライム・ビデオの動画配信も視聴できる。

イヤホンはUSBデジタル接続もお薦め

iPad Proシリーズは音質にもこだわっているタブレットだ。新しいiPad Proでは、本体を横に構えた状態で左右にスピーカーが来るように、計4つのステレオスピーカーの開口部がレイアウトされている。パワフルでクリアなサウンドが左右均等に広がって、心地よいサラウンド感が得られる。このサイズのタブレットが単体で鳴らしているサウンドとしてはトップクラスだ。

イヤホン/ヘッドホンで音を聴くための方法は今までのiPad Proとは少し変わる。前述のようにiPhoneに続いてiPadからも3.5mm口径のアナログイヤホンジャックが省かれたからだ。代替策としてはBluetoothイヤホン/ヘッドホンを使うのが最もスマートだが、USB直結のデジタルイヤホンケーブルを使う手もある。例えばシュアのUSB接続のハイレゾ対応デジタルイヤホンケーブル「RMCE-USB」は音質がとても良いのでお薦め。映画を見たり音楽を聴いたりするのにも最適だ。

このほかの機能では、iOS 12から新たに追加されたSiriショートカットの中に、新しいiPad Proに追加して真価を発揮してくれそうな面白いショートカットが日々追加されているのが楽しみだ。例えば「ショートカット」アプリで検索すると見つかる「Check Spelling」は、つづりの曖昧な英単語を入力すると自動修正してくれる便利なツールだった。今はSmart Keyboard Folioの接続だけに使われている新しいSmart Connectorも、今はまだ見ぬ新しいアクセサリーでも使える方向に発展してほしい。

ホームボタンの撤廃による大画面化やApple Pencilの操作性向上、機械学習用エンジンを積んだ「A12X Bionic」チップなど、新しいiPad Proはパソコンを凌ぐ可能性を随所に備えている。パソコン代わりに使いたいという人も購入して損はしないはずだ。

(ライター 山本敦)

[日経トレンディネット 2018年11月7日付の記事を再構成]

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