【マスコミ調査】公的年金の2022年度第2四半期運用実績が微減。日経・朝日の報道が改悪、毎日・共同は引き続き最悪

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公的年金の積立準備金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は2022年8月5日に、2022年度第2四半期運用状況報告を公開しました。


◆2022年度第2四半期(2022年7月~9月)
収益率: -0.88%(期間収益率)
収益額: -1.7兆円(期間収益額)
運用資産額: 192.1兆億円

◆市場運用開始以降(2001年度~2022年度第2四半期)
収益率: +3.47%(年率)
収益額: +100.0兆円(累積収益額)

簡単にいえば、2022年度第2四半期は「微減」。収益率は-0.88%(期間収益率)、収益額は-1.7兆円(期間収益額)という結果でした。累積収益額は+100兆円、収益率も年率+3.47%とこちらは堅調に推移しているというのが全体像です。(なお、GPIFの運用目標は中期で年率賃金上昇率+1.7%)

収益がマイナス時には張り切って「年金叩き」を行うマスコミ各社、わずかながらも期間収益がマイナスだった今期の対応はどうでしょうか。調べてみました。

Googleニュースで各メディアのネット報道内容をチェックします。チェック項目は過去の調査と同様、(1)収益額、(2)収益率、(3)運用開始からの累計実績、とします。

公的年金の運用実績(2022年度第1四半期)に対するマスコミ各社のネット報道状況

 
  (1)収益額 (2)収益率 (3)累計実績 備考
日本経済新聞 ○ △ × 運用利回り表記はないが、運用総額表記あり(読者が自分で計算しないと評価不能) 
ロイター ○ ○ ×  
ブルームバーグ ○ ○ ○  
朝日新聞 ○ △ × 運用利回り表記はないが、運用総額表記あり(読者が自分で計算しないと評価不能)
毎日新聞 ○ × × 金額表記のみのお粗末報道
読売新聞 - - - 報道なし
産経新聞 - - - 報道なし
共同通信 ○ × × 金額表記のみのお粗末報道
時事通信 ○ ○ × 
NHK ○ ○ ○  
日本テレビ - - - 報道なし
TBS ○ △ ○ 運用利回り表記はないが、運用総額表記あり(読者が自分で計算しないと評価不能)
フジテレビ - - - 報道なし
テレビ朝日 ○ △ ○ 運用利回り表記はないが、運用総額表記あり(読者が自分で計算しないと評価不能)
テレビ東京 - - - 報道なし
(Google ニュースより梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー作成。2022/11/06 10:00時点)

まず、近年ほとんど報道自体がなかったテレビメディアが3期連続の赤字実績(ごく小さいものですが)に、動意づいてきました。ただ、報道された内容に関しては、視聴者・読者に運用実績を正しく伝えられる内容になっていて、意外でしたが良いことだと思います。

TBSとテレビ朝日が報道しています。内容も(1)収益額、(2)収益率、(3)累計実績がギリギリながら読者にわかるものになっており、改善が見られます。できれば、運用実績に関係なく、いつもこの調子で報道してほしいものです。日本テレビ、フジテレビ、テレビ東京は相変わらず報道なしです。NHKだけは近年ずっと(1)収益額、(2)収益率、(3)累計実績のフル項目でわかりやすい報道を続けており、最後の牙城となっています。

次に、新聞メディアは、前回に比べて報道内容が悪化しています。

読売新聞、産経新聞は報道自体がありません。また、前回は(1)収益額、(2)収益率、(3)累計実績のフル項目でわかりやすい報道内容だった日本経済新聞が、(1)収益額、(2)収益率のみに内容がグレードダウン。毎日新聞は相変わらず「公的年金運用、1.7兆円の赤字」と(1)収益額のみしか表記しないお粗末報道です。毎日新聞社には煽り屋か運用実績の伝え方がわからない人しかいないのでしょうか。

(1)収益額しか表記しないのは、過去に収益率がわずか年率5%のマイナスであったにもかかわらず、各メディアが「年金で8兆円の巨額損失!」と金額の大きさのみを前面に出してセンセーショナル風に報道し、野党政治家を巻き込んでの大騒ぎをした時とまったく同じ構図です。

「1.7兆円の損失」と金額だけ見せられると読者は大損害、大失敗のように感じてしまいますが、公的年金の運用総額は現在192兆円と超・巨額です。(1)収益-1.7兆円だけでなく、(2)収益率-0.88%、そうでなくてもせめて運用総額192兆円は併記しないと、その損失金額が、重症なのか軽傷なのかすら読者は評価できません。たった-1%弱の軽微な損失をさも大きな損失であるかのように見せたいのかと疑われるような、事実が伝わらないお粗末報道だと私は思います。

次に、通信社は、対応が分かれました。

共同通信は毎日新聞と同じで(1)収益額しか表記しないお粗末報道です。地方新聞などに記事を配信しているので、お粗末報道が再生産されており、さらにたちが悪い。共同通信の報道レベルに対して遺憾の意を表明します。時事通信も前回は共同通信と同じお粗末報道でしたが、今回は(1)収益額、(2)収益率が表記されていてやや改善していました。共同は時事の表記を見習うべきだと思います。

そんななかで、ブルームバーグとNHKは前回に引き続き、(1)収益額、(2)収益率、(3)累計実績のフル項目がすべて表記されていました。いくら損した(儲かった)のか? それは全体に対してどの程度の影響なのか? 過去からの累計分を全部ひっくるめるとどうなのか? という年金運用実績の全体像が評価できる、読者にとってわかりやすい報道になっていました。

公的年金の年金積立金の運用実績というひとつの切り口ではありますが、日頃から国民に正しい情報を届けようとしているのか、ネガティブ報道だけを大々的にやろうとしているのか、メディアの報道スタンスを垣間見ることができます。

公的年金制度に関しては、人口増加を前提とした制度設計であることや、未納問題、過去には消えた年金問題、マクロ経済スライドの未実施等、多くの課題を抱えていることは事実です。

しかし一方で、年金積立金の運用については真面目に行われており、情報公開も進んでいるというのが、運用をウォッチしている私の認識です。これらの公開情報は、世界最大級の機関投資家の情報として、個人投資家の資産運用にも大いに参考になるものです。

年金は国民の最大級の関心事のひとつです。マスコミ各社は煽る方向ばかりに張り切るのではなく、良いことも悪いことも含め、きちんと「事実」を伝えてほしいと思います。


P.S
本文にも書いたとおり、ネットで公開されている範囲での情報収集なので、「ニュースサイトには掲載していないが、新聞本紙では掲載している」「○時○分のTVニュースで触れた」等の事情はあるかもしれません。だからといってメディア名を冠したネットニュースには非掲載でよいという理由にはなりません。

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