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マレーシア汚職 米、ゴールドマン元行員を起訴

前CEOが主犯格と面会か

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【シンガポール=中野貴司、ワシントン=中村亮】米司法省は11月上旬、マレーシアの政府系ファンド「1MDB」による巨額の資金流用に関与したとして、米投資銀行大手ゴールドマン・サックス・グループ元行員2人を起訴したと発表した。当時の最高幹部が1MDB事件の主犯格との会合に出席していた可能性も浮上し、組織的な関与が疑われる事態となっている。

米司法省は11月上旬、ゴールドマン元幹部行員のティム・ライスナー被告とロジャー・ウン被告を、外国公務員への贈賄を禁止する海外腐敗行為防止法違反の罪などで起訴したと発表した。両被告は同時に起訴され海外逃亡中のマレーシアの華人系実業家ジョー・ロー被告とともに、数十億ドルにのぼる1MDBの資金洗浄を企て、マレーシアとアブダビの政府高官に賄賂を支払ったという。このうちライスナー被告は起訴事実を認め4370万ドル(約50億円)が没収されることになった。

司法省によると、ゴールドマンは2012年から13年にかけて60億ドルを超える1MDBの債券発行を引き受け、約6億ドルの手数料を得た。政府高官への贈賄は債券引き受けなどの案件を獲得する目的だった。贈賄以外にも、ニューヨークの不動産や美術品の購入に資金が不正に流用され、横領総額は27億ドル以上にのぼると指摘している。

さらに米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、ゴールドマンのロイド・ブランクファイン前最高経営責任者(CEO)が、09年と13年に1MDBの不正で中心的役割を担ったロー被告と2回にわたり面会していたと報じた。この面会はナジブ前首相とブランクファイン氏を引き合わせるために設定されたものだったという。

このうち1回はゴールドマンの法務部門がロー被告の不正の疑いを理由にビジネスをしないよう警告した後だったとされる。事実なら不正に手を染めた1MDBとの関係構築に当時のCEOが関与した可能性があり、波紋を呼ぶのは必至だ。

米司法当局は名指しをしていないものの、2被告以外の複数のゴールドマン関係者が贈賄の事実を知っていたと指摘する。今後ゴールドマンが組織として違法性をどの程度認識していたかについて捜査が進む見通しだ。

米大手金融機関は2008年の世界的な金融危機を機に、ビジネスモデルの妥当性が問われることとなった。米司法当局の起訴内容通り、元行員が贈賄などに関与していたとすれば、ゴールドマンへの批判が再び強まりそうだ。仮に組織としての関与が認定されなかったとしても、再発防止策の策定が課題となる。

1MDBはマレーシアのナジブ前政権の汚職の中心舞台となった政府系ファンド。ナジブ氏主導で09年に設立され首都の再開発などに投資してきたが、総額45億ドル以上の不正流用の疑いが浮上した。

5月の政権交代で就任したマハティール首相は前政権時代の汚職の解明を優先課題と位置づけ、ナジブ氏や妻のロスマ夫人らを資金洗浄などの罪で逮捕・起訴した。

ライスナー被告に関しては、シンガポール金融通貨庁(MAS)も16年末、シンガポールでの証券関連活動を事実上10年間禁じる処分を下している。マレーシアや米国、シンガポールなどの捜査当局は今後も協力を進め、巨額の汚職事件の全容解明を目指す方針だ。

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