2016-08-21

シン・ゴジラそんなに言うほど面白いかあ?? <追記アリ>

最初に「煽りタイトルである事に謝罪しておく。

 

1週間ほど前に話題ゴジラを見に行った。面白かったは面白かった。

が、事前ハードルが上がりすぎていたのか、粗(に私には見えた)の部分が結構気になってしまい、正直世間で言われている程に「大傑作」にはあまり見えなかった。

この一週間ほど感想記事などをいろいろ巡ってはみたが、いくつかの批判記事もあまり共感できる内容でも無かったので、ひとつ増田にでも吐き出してみる。なお、いろいろと確認意味も込めて昨夜もう一度シン・ゴジラは再視聴している。

 

 

という訳で以降シン・ゴジラへの不満点を列記する。

 

 

登場人物ゴジラへの理解度が要所要所で不自然に高い

 まず冒頭の10分か20分くらいで気になった部分。主人公矢口会議中に巨大生物言及するのだが、この時点で矢口がそう判断に至った材料は精々ネット動画程度であり、あそこでアレを「生物」と考えるのはかなり不自然だ。この時点では矢口は単なる夢想レベルである

 演出意図としては「唯一真実リーチしている主人公」のように見えるのだが、それならもっと巨大生物という予測に納得感が無ければ意味が無いように思う。もし矢口をそうした「夢想家」的キャラクターとして描く意図があったのならば納得がいくのだが、以降は基本的に「有能な政治家」然と描かれるのでそれも考えづらい。

 基本的に高いリアリティラインで進む映画のため、このシーンで不自然映画の先を予測した発言があるのは違和感が大きかった。さらにそれに続く、会議室尻尾ニュース映像が流れるシーンがその印象を後押ししていて、あの映像だけであれを「巨大生物尻尾」と判断できるというのもかなり不自然に思う。映画の進行のためにさっさと登場人物全員に対象を「動物」だと認識させたい+ゴジラの全体の姿をここでは見せたくない、という意図からあいったシーンになったのだろうが、やはり不自然は不自然だ。

 比較的序盤のこの2シーンで、「映画の都合で登場人物理解力直感力が劇中で変動する映画では?」という疑念が生まれしまった。

 ゴジラに対する登場人物リアクションとしては、最終形態が現れたシーンでも、あれだけサイズ形態も変化していれば、別個体可能性への言及があっても良かったのではないだろうかと思う。ここでも映画の進行のため、そうした選択肢登場人物に不自然に与えていなかったように感じられた。特に「あらゆる可能性を」と発言していた矢口最後まで同種の別個体存在言及しなかったのが不満として残った。

 

 

・人の死の描き方について

 ネットでは「死がちゃんと描かれていない」「いやアレでちゃんと描かれている」という論争がいくつかあったようだ。

 個人的には全体を通してあくま被害俯瞰的に描いていたのは面白かったと思う。「対策ルームに篭って黙々仕事をする政治家」が主人公という映画なので、むしろ現場被害をことさらクローズアップせずに描いたのは正しい。

 が、むしろそれならその描き方を徹底して欲しかったという不満があり、2,3箇所ほど不自然に急に人死にがクローズアップされたシーンがあり、そこが「ちゃんと死を描いていますよ」というアリバイ作りのシーンに見えて正直気持ち悪かった。

(一つは倒れるマンションから逃げ遅れた家族、一つは溢れた川から逃げる男性、もう一つどこかで同じことを思った気がするが覚えていない)

 この点はあまり大きな不満という程では無いのだが、どうにもモヤモヤとしてしまった部分だ。「全体としては面白いとは思うのだが、細かい不徹底が気になってガッカリしてしまった」というのはシン・ゴジラ全体に対する不満でもあるので、その意味でも言及しておいた。

 

 

石原さとみキャラが明らかに浮いている

 これは褒めている人の中でも言及している人がチラホラ散見されたが、カヨコのキャラクターリアリティラインを高めに設定しているこの映画の中で明らかに一人浮いているように感じられてかなり気持ち悪かった。正直ここまで不自然に浮いたキャラクターをこの映画に投入した作劇意図がよく分からない。

 とある感想で、「カヨコの突飛なキャラクターによりリアリティラインが下がったために、その後のヤシオリ作戦が受入れやすくなっている」という説明があったが、ちょっと納得しづらい。ヤシオリ作戦はかなり無茶な内容の作戦ではあるものの、劇中の他の展開で「これしか残された作戦はない」という納得感は十分作れており、カヨコの存在が無くても十分受け入れられたと思う。そもそも、対ゴジラ作戦リアリティライン登場人物ドラマリアリティラインとは(相関してはいるだろうが)別の話であり、突飛なキャラクターいるからと言って突飛な作戦が受入れやすくなるものだろうか? 単に「不自然に浮いたキャラがいた」というだけに見える。

 全体通して極めて「大人」な登場人物物語が進んでいるだけに「なんでこんなキャラクターを入れて雰囲気ぶち壊すんだろう?」と感じた。

 

 

・ヤシオリ作戦について

 当のヤシオリ作戦についてであるが、例の無人在来線爆弾など独特のケレン味の魅力は確かに素晴らしいとは思うのだが、最後の決着の味気の無さが気になった。有り体に言うと「ショボい」。

 意図自体は分かる。派手な秘密兵器などを使うのでなく、人々の地道な対策奔走による勝利を描きたかったのだろう。だが、結局それと特撮的な絵の盛り上がりとバッティングしてしまっているのは悪手だったのではないかもっと同じ演出意図を満たしながらも、絵的に迫力あって盛り上がる「決着」を描く方法が何か無かったのだろうか、というのがどうしても不満。

 注入量を読み上げる緊迫感あるシーンで、「放水した分を全て飲んだ計算して大丈夫なのか?」「そもそもあの生物「口からモノを飲む」という習性自体あるのか?」などの疑問が脳裏をよぎってしまったが、そうした疑問ももっと絵的な盛り上がりがあれば勢いで誤魔化されていたのにな、と思うので、ここも「悪くは無いんだけど、もう一歩足りないなあ」と感じた部分。

 加えて、ヤシオリ作戦に関しては、矢口の陣頭指揮の部分にも中途半端さに違和感があり、これまで徹底して「対策室で対応する政治家」を描いてきて、結局最後は「主人公現場の陣頭指揮を取りに行く」というのを描くのか、というのに少し落胆した。せめて矢口本人が言うように「自分現場にいる事で出来た微妙判断」が描かれていればスッキリはしたかも知れない。まあそれをやると矢口ヒーローっぽくなりすぎるきらいがあるのでまた違うんだろうなとは思うのだが。

 

 

・「国」のアピール

 別に国威掲揚だ」とか「日本スゴイきめー」だとか言うつもりは無いが、そうでなくても妙に「国」や「日本」のセリフ唐突さというか、無理やり挿入した感があって首を捻った。矢口の「皆休まず熱心に仕事してくれる」から「この国はまだまだやれる」のセリフに繋がるのに飛躍を感じる。前段階として「政治家としてこの国に失望しかけていた矢口」という描写でもあればドラマとして納得しやすくはあったのだが、そういう個人ドラマフォーカスする映画では無かった。「ニッポンゴジラ」というテーマのために無理に接続した感がある。

 また、これも同意見を多少ネットで見られたが、総体としての「日本」とゴジラとの戦いを描くのがテーマであるのであれば、あそこまで「東京」のみの話に終始したというのはどうなのだろうと思う。劇中でモブセリフ地方軽視へのエクスキューズ台詞があったが、正直言い訳程度にしか感じられず、物語として組み入れられてはいなかった。話を2時間にまとめることを考えれば、そこまで舞台拡散させるのは難しいというのは分かるが、映画全体で「日本」や「国」を強くアピールしていた事との整合性がとれていなかったように思う。

 

 

 

 他、細かい部分は置いといて、強く気になったのは以上の点だ。

 「細かい事を気にしすぎ」と言われるかも知れない(というか知人に話したらそう言われた)が、気になってしまったのだから仕方ない。面白かったは面白かったが、改善できそうな部分、徹底されていない部分がチラついてしまった、というのは何度も繰り返す通り。「大傑作」の評に期待して見に行ったため、「ここがクリアされてないのか…」というガッカリが先行してしまったきらいはある。

 リアルの知人と言い合いになっても後味悪いので、増田で一通り吐き出させてもらった。以上。

 

 

<追記>

続きと種明かし

http://anond.hatelabo.jp/20160822181856

記事への反応 -
  • 日記を各

  • ほぼ同じ感想が20日以上前から繰り返し挙げられてるのに増田はなぜまた『同じ過ち』を繰り返すの? その程度の記事を書きたかったら最速上映の直後位に書きなさい。以上。

  • シン・ゴジラは、みんなとにかく観たら何か書きたくなってしょうがなくなる映画なんだなーって心から思う。 これほど人々の「ねえ聞いて聞いて!」を引き出せる作品もそう無い。 ...

  • ネットに上がった最前線の動画がソースにならないってのは劇中にあった老害思考だろ。全体的に若い方面にスポットを当ててるから増田がつまらないと感じるのは当然

  • あと折り紙のくだりとかラストの半減期がめっちゃ短い新しい同位体とか なんじゃそりゃっていう部分はあるんだけど まぁそれも踏まえてスピード感で押し切って「おもしろかった」と...

  • 矢口が冒頭で「生物」とわめくのが不自然 だから散々言われているだろうが。冒頭で矢口は「暴走しがちで人付き合い苦手な若手」として描かれてるだろうが。冒頭で有能に描かれて...

    • 女の子がいた方がいいだろ!フィクションなんだからゴタゴタ言わず楽しめ! とか低レベルな言ってるやつが他人に的外れとか最高に面白い

    • 少ない情報で生物と断定するのが不自然→コミュ症なんだよ! 死の見つめ方が一貫してない→あれだけ破壊したら人が死ぬに決まってる! アニメみたいなキャラ→怪獣が一番のウソだ...

    • 反論になってない。元増田は「全体にリアルなのに石原は浮いてて不自然」と言ってるんだからお前は「浮いてない」「自然である」と反論すべき。お前が映画の欠点を認めてどうする...

    • お前、「石原は浮いてなどない」と言わずマーティング・製作的言い訳を始めた辺り、ほんとは石原の浮きっぷりを自覚してんだよな。事実指摘されてキレるとか信者キモすぎ。

  • 登場人物のゴジラへの理解度が要所要所で不自然に高い あれは「有能が故の先走り」の描写だろ。だから竹野内豊に窘められる。 それ以外はまあまあ同意。

  • ゴジラの欠点指摘は納得がいくものも多いんだけど、目を瞑れるものがほとんどだったとも思う。 もし最初の巨大生物指摘を官邸にいる少なくない人数が信じてたら厳しいけど、無視さ...

  • 大体同意。 シン・ゴジラがこれだけウケるのは作品の面白さもさることながら、見た人の解釈が多様にできるというか、料理で言うところの素材としての面白さじゃないかと思う。 エ...

  • http://anond.hatelabo.jp/20160821212820 一回しか見てないんで見落としてるだけだよってだけかもしれんけども 矢口の巨大生物の可能性への言及:アクアライン上に火山があるわけない→生物...

    • 不満点はそれだけか(http://anond.hatelabo.jp/20160822144854)の突っ込みが面白かったので勝手に答えてみる。なお当方は一応2回見た。 さて増田の疑問の半分くらいは「非常時なんだから仕方...

      • あの容積で中身がスカスカだと海に沈まないんじゃ。。。 海中では萎んでる?

      • 第四形態の総重量調べたら92000tだそうだ。 ちなみになぜかしれっと立ってる常盤橋プロジェクトB棟は高さ390m。スカイツリーの鉄骨重量が地上部合わせて41000tだそうなので鉄骨重量だけ...

        • ウルトラマンからの流れだろうけど動きがなんかちゃっちいんだよね。 軽いというか巨体が動いたら街がどうなっちゃうのぉん?!みたいな疑問の答えがなくて ただノコノコ歩いてるだ...

          • 増田も自分が相当重い部類に入るから重い軽いについて拘りがあるんだと思うが、そもそもの最初のゴジラの体重は2万トンだ。 そこら辺を踏まえた上での今回のゴジラなだけであって、...

          • そうなのよねぇ。。。 きぐるみ怪獣はそれはそれで好きなのだが、動きが軽いのがどうしてもネックになるのよね…大きくなれば大きくなるほど物理的な挙動は変わるわけで ちなエヴァ...

        • ゴジラ2016 の 総重量92,000tって 公式設定なの? http://anond.hatelabo.jp/20160823113750

    • >御用学者との会談 あれはパロディなので >蒲田くんの川遡上 実際におきたら、自宅の窓から実況中継する生主や ゴジラ来てるけどFPSやめられない生主が続出する >逃げ遅れた家...

      • >逃げ遅れた家族 パニックになると案外あんなもん、地震の時も震度6の中FPSやってたり 津波が自宅に到達するまで実況している人もいた それは知ってるけどあれは子供のいる母親...

        • >品川くんの前を横切る老人たち あれは、攻撃目標の側に民間人がいた場合でも自衛隊は攻撃できるのかっていう演出なので 演出意図はわかってるがあまりにもご都合主義だっ...

          • 避難完了しました→ワイは信じるだけやで のシーンはタバ作戦直前のはずやで。なんで、「実は避難民いた」って話とはちゃうで。

          • 順序はどうだったか覚えていないがギャグだと認識しなかったことからして「部下の~」発言は品川くんの時じゃないと思うな あと老々介護はたしかに問題なのだが、下町は案外動けな...

  • http://anond.hatelabo.jp/20160821212820 ホッテントリ入りすると釣り宣言の部分まで見えちゃうんだけど そこからひらいて読んでやろうっていう気には絶対ならないわ みんな偉いな

  • シン・ゴジラの真価は、これから広がるであろう一見さんによる批評の中にこそ有る。 つまり、「満点からマイナスされうる特撮映画」が帰ってきた、と言う意味だ。 1週間ほど前に話...

  • えー、昨夜こちらの記事を書いた者です。 シン・ゴジラそんなに言うほど面白いかあ?? http://anond.hatelabo.jp/20160821212820 先の記事読んで頂いた方々に心からお礼とお詫びを申し上げま...

  • ごめん普通に増田が正しいと思いますよ。以下は全部言い訳です。 おれはテーマに絶対不変の価値があるという前提の人に対して、そんなものはないけど逆にだからこそみんながテーマ...

    • うん。別にオレ、増田の主張否定してないし否定しない。テーマとモチーフの違いを踏まえてる増田が、物事分かってないとは思ってない。強いて言えば「みんな喧嘩やめーや」という...

      • ならよかったー。言われてみれば仲良く喧嘩が理想かもしれない。喧嘩できるパワーってのもいいもんね。 2いらないとは思うけど、正直シンゴジラ自体制作アナウンス時はいらないと...

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