エキスパート一覧

小山堅

日本エネルギー経済研究所 専務理事 首席研究員

日本エネルギー経済研究所 専務理事 首席研究員

「脱炭素」や「エネルギー安全保障」、米・中・露・中東などのエネルギー問題など、国際エネルギー情勢の今を切り取る第一人者。1986年早稲田大修士修了、日本エネルギー経済研究所入所。2001年英ダンディ大博士。政府のエネルギー関連審議会委員に加え、国連のアドバイザーなども歴任。13年から東京大公共政策大学院客員教授。
【注目するニュース分野】エネルギー・環境政策、地政学、安全保障
「脱炭素」や「エネルギー安全保障」、米・中・露・中東などのエネルギー問題など、国際エネルギー情勢の今を切り取る第一人者。1986年早稲田大修士修了、日本エネルギー経済研究所入所。2001年英ダンディ大博士。政府のエネルギー関連審議会委員に加え、国連のアドバイザーなども歴任。13年から東京大公共政策大学院客員教授。
【注目するニュース分野】エネルギー・環境政策、地政学、安全保障
小山堅

昨年10月のハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃で始まったガザ危機は、甚大な人的被害を発生させながら、紛争を地域的・空間的に拡大させ続けてきた。今回のイスラエルとレバノン、実質的にはヒズボラとの停戦合意は拡大の一途を辿ってきた紛争のさらなる拡大に一定の歯止めをかけることになるのかどうか、期待と注目が集まる。しかし、実際にはこの停戦合意が実行され安定化につながるのかどうかもまだ不透明である。これまで中東情勢流動化は石油供給への潜在的リスク要因として原油価格にリスクプレミアムを発生させてきた。トランプ政権発足の影響も含め、まだ先が読めない中東情勢に関しては引き続き注視が必要である。

小山堅

中国の不動産不況は極めて深刻な構造的問題として、中国経済の下押し要因として今後も影響を及ぼし続ける可能性が高い。日本もバブル崩壊後、長きにわたる苦境に苦しんだ。中国経済の世界経済に占める重要性を考えると、この問題は深刻だ。特にエネルギー市場においても同様であり、過去20年以上にわたって国際エネルギー市場での需要拡大の牽引車であった中国が経済低迷に苦しみ、需要鈍化が深刻化すれば、そのインパクトは大きい。2025年以降も中国ファクターによって、国際エネルギー市況は大きな影響を受け続けることになるだろう。この先の展開は要注意である。

小山堅

トランプ政権が再登板する直前のCOPで何が決まるのかが注目されることになったが、一番の関心事項である、途上国支援は3000億ドルで妥協が成立した。途上国側は1兆ドルを求めたが、現在の1000億ドル支援の実現でさえ容易でない状況から見ると、このあたりが「ギリギリの線」であったということなのだろう。ただし、トランプ政権になれば支援の増額はまず期待が難しい。欧州は支援の重要性を発言し続けるだろうが、対ロシアを意識した安全保障費用の上積みも必要になる。先進国支援の大幅増額を巡る状況は極めて厳しいというのが現実ではないだろうか。

小山堅

次期トランプ政権の主要閣僚の人事などを見ると、「アメリカファースト政策研究所(AFPI)」のプレゼンスが目立つ状況が明らかとなっている。第1期の政権時から、また今回の選挙期間中も常に標榜してきた「Make America Great Again(MAGA)」を実現するためには、「米国第1」を徹底的に追求する、という基本方針が取られていくことになるだろう。筆者が関心を持ってウォッチする、エネルギー・気候変動分野でも同様である。トランプ政権の政策は、米国政治・経済・社会を揺さぶると同時に、国際政治・世界経済・地政学や安全保障を大きく左右していくことになる。

小山堅

世界が注目するIEAの「World Energy Outlook」の最新版が発表された。ここ数年は、世界全体が2050年にはGHG排出がネットゼロになるためにはどう変化していくべきかを示すNZEシナリオが注目を集めてきた。今回の見通しでは、脱炭素化の重要性は変わらなくとも、エネルギー安全保障に力点が置かれ、化石燃料の安定供給問題にも目配りが行われている。理想と現実のギャップが拡大する中で、IEAの分析のスタンスにも微妙な変化が読み取れるような気がする。

小山堅

ガザ危機が発生してから1年が経過した。状況は深刻さを増すばかりであり、人的被害は拡大、人道危機は未曽有の悪化を続けている。ガザ危機が継続するなら、イスラエルと「抵抗の枢軸」との対立・軍事衝突は、ガザを地理的・空間的に超えて、中東地域での拡大を続けている。最近はイランとイスラエルの直接的な衝突の可能性に世界が目を向けるようになり、むしろガザへの関心が相対的に低下するような状況となっている。今回の危機の根源となったガザの問題も含め、中東全体での包括的な安定を図る必要がある。しかし、その道のりは先が全く見えず、むしろ混迷と不安定化が進むばかりである。

小山堅

イランがイスラエルへのミサイル攻撃を実施し、これまでの「自制」のスタンスから一歩踏み出したことで、次の焦点はイスラエルによる報復攻撃がどうなるか、に移った。イスラエルは報復の実施を表明しているが、それに対してイランはもし報復攻撃があれば更なる反撃の可能性を示唆しており、報復の連鎖と軍事対立の悪化・本格化を招く懸念が高まっている。イスラエル側の攻撃がイランの石油関連施設に及ぶ可能性も指摘されるようになっており、その状況次第では地政学リスクが石油供給支障に直結する可能性も現れている。原油市場もその可能性に神経を尖らさざるを得ない。

小山堅

9月末の原油価格急落、その後の中東情勢緊迫を受けて、原油価格は不安定状況を迎えていた。その中で、国際石油市場の需給調整役を果たすOPECプラスの対応が世界の注目の的となっていた。ある意味、OPECプラスは現在の極めて不透明な状況を勘案し、「様子見」スタンスを取ったと見ることができるかもしれない。減産政策の変更などドラスティックな変化を回避・自制し、現行の減産体制の立て直し・強化の方を重視したのではないか。同時に中東情勢などの不透明要因への目配りも必要であったと思われる。原油価格は世界経済や米国大統領選挙にも影響を及ぼす。今後の地政学情勢、サウジアラビアの政策などを注視していく必要がある。

小山堅

イスラエルと「抵抗の枢軸」の対立が、激化と拡大の悪循環に陥りつつあるように見える。ガザ危機、フーシー派との衝突、ヒズボラとの戦闘激化に加えて、イランによるミサイル攻撃の実施という展開になっている。イランの自制がどこまで、どの程度続くか、が悪循環の先行きを見る一つのポイントと考えていた中、今度はイスラエルによる反撃の問題が重要なカギを握ることになる。中東情勢の流動化に歯止めが掛からず、混迷・混乱・不安定化が一気に広がり、悪化するのではないか、という懸念が国際社会に広がっている。

小山堅

懸念されていた、イスラエルによる対ヒズボラのレバノンへの地上侵攻が始まった。これでまた両者による軍事対立は新たな局面に向かうことになる。報復が報復を呼ぶ悪循環が深刻化し、中東情勢の一層の流動化が進む恐れが高まっている。この状況で、また新たに注目すべきはイランの動向である。これまで、対イスラエルで自制に努めてきたイランが、どこまで自制を貫けるのか、その点が世界の注目を集めることになる。国際エネルギー市場の安定の要である中東での著しい地政学リスクの行方を注視していく必要がある。

小山堅

イスラエルの強硬姿勢が強まるほど、孤立も、周囲からの反発も強まる悪循環が生まれている。ガザ危機の打開が見通せない中、フーシー派との対決も続き、最近はヒズボラとの衝突が止まらない状況にある。イスラエルによる地上作戦の可能性も浮上しているとされる。ここにきて改めてカギを握るのはイランかもしれない。イランはこれまでのところ、最大限の自制をしているようにも思われる。もし、イランの自制に歯止めが利かなくなれば、中東は地域全体での情勢流動化・動乱のような事態を迎える可能性も決してゼロではない。今後の中東情勢には最大限の注視が必要であろう。

小山堅

エネルギー安全保障の強化と脱炭素化の両立を追求するエネルギー転換を進めて行くにあたって、原子力への関心が世界的に高まっている。AIやデータセンターの拡大で電力場が大きく増大していく可能性も原子力の利活用に関する内外の関心を大きく高めている。再稼働や既存炉の活用、そして新設・増設、SMRなどの新技術への取り組みも動いている。しかし、発電オプションとしての原子力への期待が高まるほど、バックエンドも含めた燃料サイクル全体での取り組み強化が重要になる。今回の動きはその一歩であるが、今後、ますます燃料サイクル全体を視野に入れた政策的取り組みの強化が求めらえてこよう。

小山堅

電池、EV、そして再生可能エネルギーなどに関しては、その部材も含め製造能力の面で中国のシェアが極めて高くなっている。それらの部材や製品の製造に必要なクリティカルミネラルの供給(とりわけ精製や精錬などの中流部門)においても中国の供給シェアが非常に高い。世界がこれら製品の利用拡大を進めれば進めるほど、現状では中国への依存が高まる構造にある。世界の分断が深刻化する中でこの問題は経済安全保障問題の中心の一つとなった。欧米や日本はこの問題に対応して供給源の多様化や新たなサプライチェーンの構築に向けた努力を強化しようとしている。エネルギー政策においてもこの経済安全保障問題が世界の重要課題となっている。

小山堅

イスラエルによるヒズボラへの攻撃拡大・強化によって、両者の本格的・全面的な軍事的対決の可能性が懸念されるようになっている。ガザ危機発生とその深刻化の中で、危機の中東域内での拡大が続いてきたが、これまではイスラエルとイランの対立激化の際における「一定の自制」が働いたこともあり、何とか紛争拡大と深刻化を抑制できてきた。今回のイスラエルとヒズボラの軍事的衝突の激化は、この状況に変化をもたらす可能性もあるのでは、という点で従来以上に世界の注目を集めている。世界のエネルギー供給の重心である中東の地政学情勢の混迷と流動化とその影響に引き続き留意すべきである。

小山堅

航空分野の脱炭素化への取り組みにとって、SAFへの期待は大きい。循環型経済のコンセプトに沿って、廃食油を活用して脱炭素燃料を製造し、航空機の利用側などでは、現在のインフラ・設備を活用しつつ、脱炭素化に向かうことができるからだ。もちろん、この動きの重要な背景には、ICAOやIATAなどによる規制・制度の存在や影響が大きい。しかし、この記事が指摘する通り、SAFあるいは航空分野の脱炭素化には、まだまだ課題が多い。SAFの取組みを端緒に今後の取組み強化と課題克服が図られていくことになろう。今後の展開は要注目である。

小山堅

電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)の比較において、近年注目されるようになった新たな重要要素がクリティカルミネラルの使用量の差異である。バッテリーを大量に必要とするBEVは、一台あたりでPHEVの数倍のクリティカルミネラルを必要とする。BEVが大きく普及すれば、クリティカルミネラルの需要が激増し、需給逼迫と価格高騰、さらにはその場合の特定供給源への高い依存から生じうる様々な問題を深刻化させることにつながる可能性がある。こうした経済安全保障の観点からパワートレインの問題を考えていくことも重要であろう。

小山堅

AIの急速な利用拡大は、それを支えるためのインフラ関連投資、すなわちデータセンターの増設や半導体製造の拡大などを通して、電力需要を大幅に押し上げる可能性がある、ということで世界的な注目を集めるようになっている。しかし、同時に、AIの活用は効率化の最大限の追求で、この記事で紹介されている通り、エネルギー利用の効率化を大きく進める可能性もある。AIの活用が「正味」でエネルギー利用の増減にどのように影響するのかは、いまだ見極めが難しく、今後の極めて重要な分析・検討課題であり、内外でエネルギー政策にも大きな影響を与えうる要因である。

小山堅

生成AIの急速な利用拡大とその下でのデータセンターの大幅増設、さらには半導体製造設備の拡大などに象徴される新たな情報革命の進展によって、電力需要の大幅な増大が予想されるようになっている。日本でもこの傾向は大きく顕在化しており進行中のエネルギー基本計画策定を巡る議論でも中心的なトピックの一つとなっている。東京電力に限らず日本の電力産業全体として、この電力需要増大を安定的で、かつゼロエミッション電源によってどう賄うか、しかも競争力のある価格でどう提供するか、が重大な課題となっている。その成否は日本の産業の国際競争力や日本経済そのものの成長を左右しうるだけに、官民を挙げた本格的な取組みが必須である。

小山堅

脱炭素化への取組み強化に加えて、エネルギー安全保障の重要性が強く認識され、世界的に原子力の重要性に改めて脚光が当たっている。さらに新たな情報革命の進展で、生成AIの利用拡大、データセンター増設、半導体製造強化で、電力需要が大きく増加、それを安定的なゼロエミッション電源で賄う必要性が認識されていることも原子力への期待を高める結果をもたらしている。日本では再稼働促進や既存炉活用を中心に原子力への取組み強化が進んでいるが、進めば進むほどバックエンドも含め燃料サイクル全体での取り組みが重要になる。再処理工場の完成もその極めて重要な一部であり、国・事業者全体で最大限の取組み強化を図る必要がある。

小山堅

最近の原油相場は、様々要因で上下に大きく揺れ動いている。8月上旬の世界同時株安で急落したが、株式相場が持ち直し、ひと段落した。しかし、その後も世界経済の先行き不安と潤沢な石油供給に押されて、じりじりと値を下げたが、今回はリビアでの実際の石油供給低下の見通しに直面して、油価が反発した。中東情勢の不安定化は継続しており、むしろさらなる悪化の可能性もある。ここまでは、中東情勢の不安定化が石油供給低下につながらなかったため、原油価格の押し上げ効果は限定的だった。しかし、今回のリビア情勢のように実際に石油供給に影響が出れば、話は別となる。今後の動向に注目したい。

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