エキスパート一覧

小山堅

日本エネルギー経済研究所 専務理事 首席研究員

日本エネルギー経済研究所 専務理事 首席研究員

「脱炭素」や「エネルギー安全保障」、米・中・露・中東などのエネルギー問題など、国際エネルギー情勢の今を切り取る第一人者。1986年早稲田大修士修了、日本エネルギー経済研究所入所。2001年英ダンディ大博士。政府のエネルギー関連審議会委員に加え、国連のアドバイザーなども歴任。13年から東京大公共政策大学院客員教授。
【注目するニュース分野】エネルギー・環境政策、地政学、安全保障
「脱炭素」や「エネルギー安全保障」、米・中・露・中東などのエネルギー問題など、国際エネルギー情勢の今を切り取る第一人者。1986年早稲田大修士修了、日本エネルギー経済研究所入所。2001年英ダンディ大博士。政府のエネルギー関連審議会委員に加え、国連のアドバイザーなども歴任。13年から東京大公共政策大学院客員教授。
【注目するニュース分野】エネルギー・環境政策、地政学、安全保障
小山堅

ここ1~2年ほど、化石燃料の役割・重要性を見直す流れが続いてきた。国際情勢、とりわけ国際エネルギー情勢の「現実」を冷静に見極める必要がある、との認識がその背景にある。エネルギー安全保障強化と脱炭素化の両立を図るエネルギー転換の重要性は変わらないが、そのエネルギー転換は長期間にわたり、その長き移行期間の間、化石燃料は重要な役割を果たし続ける、との意識が強まっている。今回のBPの戦略転換は、こうした現実の流れを踏まえたものであり、企業として、現実を踏まえた戦略の立て直しを図った、ということになるだろう。

小山堅

ロシアの石油に対する制裁は、ロシア経済の大動脈である石油輸出収入へ打撃を与えることを目的としていた。しかし国際石油市場の柔軟性が、制裁を課して輸入を削減・停止した西側諸国に代わって、中国やインドによる輸入増加を現実化させ、結果的には現在に至るまでロシアの石油輸出はほぼ戦争前の水準を保つことになった。市場の柔軟性(あるいは「抜け道」)に厳しく対処して、仮にロシアの石油輸出の削減が実現すれば、原油価格水準が切り上がり西側にとってはブーメランのように悪影響と打撃が返ってきてしまうことになる。この3年間、ロシアの石油への制裁はこうした「ジレンマ」に直面し続けてきたともいえるだろう。

小山堅

新たな情報革命で、電力需要が大きく伸びる米国では、その電力需要に如何に対応するかが、重要な問題となっている。原子力への期待も高まっているが、当面はガス火力発電が大きな役割を果たしそうだ。その上で、CCSなどを活用することでCO2の排出削減を進めるというオプションへの関心が高まっている。これは、化石燃料が問題なのではなく、化石燃料利用から発生するCO2に対応することが重要、という考えに沿ったものであり、カーボンマネージメントを重視する立場でもある。エネルギー転換を進めていく上で、様々なオプションの活用(多様な道筋の追求)が重要になっている。

小山堅

OPECプラスは、協調減産体制の維持を選択したがこれはサプライズでは無かった。OPECの盟主、サウジアラビアのムハンマド皇太子とトランプ大統領の関係は良好で、トランプ政権1期の際には「蜜月」と称された。バイデン前政権の初期の軋んだ関係とは対照的である。現在の石油市場は微妙な需給バランス状況にある。トランプ関税の影響も含め世界経済リスクでマクロ的には価格下押し圧力が作用しやすい。ここで増産に応じれば原油価格が大きく低下し、産油国は自ら首を絞めることになりかねない。今後、原油価格が地政学リスク要因などで上昇する動きを示すようなときであれば、サウジアラビアも増産によって協力を示すことが考えられる。

小山堅

トランプ関税で市場は不安に苛まれるような状況になっている。原油市場も同様で、上げ要因・下げ要因が交錯して市場は神経質にならざるを得ない。短期的には特にカナダ原油に(25%でなくとも)関税が掛かれば、カナダ原油を設備構成上のニーズで必要とする米国製油所にとってはコスト高になり、ガソリン価格を押し上げる要因となる。他方、もう少し長いスパンで見ると関税は全体としてのコスト上昇・インフレ要因で景気減速要因となる。こちらは需要鈍化を通して原油価格を押し下げる要因となる。どちらの力がより強く働く(と意識される)か、によって原油価格変動の方向性が影響を受ける。今後もトランプ関税の行方から目を離せない。

小山堅

シェール革命が始まった2000年代後半以降からの約10年間はまさに 「掘って掘って掘りまくる」が当てはまる状況であった。水平掘削と水圧破砕という先進技術の応用でシェール開発が一気に進み、石油もガスも歴史的に異例の大増産を続けた。量的な拡大が重視された時期であった。しかし、その大増産が2015年以降の原油価格低下をもたらし、シェール開発にとってはコスト削減が重要な問題になった。コロナ禍の発生で需要減少となり、価格暴落が発生したことも重なり、量的拡大から投資効率重視への大きなシフトが生じたといえる。その現実の下では、「掘って掘って掘りまくれ」の大号令の影響も限定的とならざるを得ないのではないか。

小山堅

電力広域的運営推進機関による電力需要の上方修正は2年連続となる。昨年の見通しでは、それまで長期的に日本の電力需要が低下していくとした将来像から、増加に向かう将来像への大きな方向転換を示した。今回はその需要増がさらに加速する姿を示すことになっている。その背景にある最大の要因は、新たな上昇革命の推進による「DX効果」ということができるだろう。今後、こうした電力需要の増大に対応して、安定的に、競争力のある価格で電力を供給していくことが必須の課題となっていく。そしてもちろん、その電力は可能な限り脱炭素の電源で賄わなければならない。日本経済の将来的発展を支えるためにもこの課題克服が極めて重要となる。

小山堅

急速な普及拡大期から、拡大の減速・低迷、そして前年割れとなった欧州のEV販売をどう見るか。昨年の販売不振を一種の「踊り場」として捉え、踊り場を過ぎると再び増勢に向かうのかどうか、が大いに注目されるところとなる。補助金が削減・停止されたことが、販売不振の直接の原因であるとするならば、いわゆる「アーリーアダプター」の需要が一巡すると、一般の消費者にとってはまだまだ経済性・利便性などにおいて最初の選択肢になりにくい状況が残っている、ということを示唆するものとも考えられる。課題を克服して踊り場を乗り越えていくのかどうか、EVの発展の今後に着目していく必要があろう。

小山堅

パリ協定からの離脱表明は予想された通りのことが実際に起こった、と捉えるべきものである。MAGAの実現のため、アメリカ第1主義を徹底的に追及する、という政権の基本方針が、環境・エネルギー政策で、具体的に大統領令の形をとって現れた、ということでもある。米国の石油・ガスの生産拡大を追求する政策も全く同じ文脈で理解すべきものとなる。パリ協定からの再離脱や、エネルギー増産への取組みが、実際に世界にどのような影響を及ぼしていくのか、これから先が注目される。

小山堅

トランプ政権が発足する直前に、イスラエルとハマスの停戦が発効した。2023年10月のハマスによる奇襲攻撃で始まったガザ危機は、一時的な停戦を除くと今日まで継続し、人的被害は拡大、極めて深刻な人道危機状況をもたらした。また、ガザ危機は、中東内で地域的・空間的に拡大を続け、イスラエルは、フーシ―派・ヒズボラ・イランなどとの軍事的対立をも深刻化させた。今回の停戦が今後どのように維持され、関係の安定化をもたらし、最終的な恒久停戦につながるかどうか、まだ予断は許されない。しかし、ここまで継続・悪化してきたガザ危機が変化を迎える一つの転機になる可能性はある。中東情勢の先行きに注目して行きたい。

小山堅

いよいよトランプ2.0が正式に始まる。就任初日に、どのような方針が正式に示され、大統領令が発出されるのか、大いに注目したい。事前の予想通り、エネルギーや気候変動分野でも、MAGA実現とそのためのアメリカ第1主義の追求という文脈で、様々な政策が一気にスタートすることになるだろう。日本は日米同盟を重視する基本スタンスを踏まえつつ、エネルギー協力をどのように立案し具体化するか、十分な備えとアクションが必要である。

小山堅

WTIが5か月ぶりの高値となった。基本的要因には、北半球の冬の寒さによる需要増があり、在庫の低下が背景として存在している。なお、気温要因による需要増と在庫低下は石油だけでなく、ガスなどにも見られている。加えて地政学要因が原油を押し上げているとも見られる。しかし、大きな視点での需給ファンダメンタルに関しては、いまだに2025年全体を通して潤沢な供給が意識されている。冬場の寒波が終わるころにはファンダメンタルズの影響が再び重要視されてくる可能性もあろう。特に中国経済の動向は要注意である。

小山堅

ウクライナ危機の際の異常な高価格から、2023年以降の欧州ガス市場は落ち着きを取り戻していたが、ここにきて様々な変動要因が顕在化している。いまだに水準としては高レベルにあるが、最近まで欧州のガス在庫は低下傾向を示してきた。また再エネの不調で欧州電力需給が逼迫、価格も高騰し、ガスへの需要が高まる方向に市場は動いた。そして今回はウクライナとロシアのガス契約問題である。2025年以降の欧州ガス市場の動きは、スポットLNG価格にも多大な影響を及ぼすだけに今後の展開は要注意である。

小山堅

脱炭素化とエネルギー安全保障の両立を目指すエネルギー転換を進めようとすれば、重要鉱物などの需要は激増し、需給逼迫・価格高騰を招くことにつながる可能性が高い。重要鉱物の安定供給確保が、今日の世界の重要課題になっているわけだが、それは、資源の戦略的価値を高め、世界的な資源獲得競争の激化と、資源ナショナリズムの台頭を招く、という「副作用」も持つ。消費国にとっては、資源確保だけでなく、省資源技術の開発、代替技術の開発、リサイクル、戦略備蓄整備など包括的な対策が重要となる。

小山堅

エネルギー市場は天候や気温によっても大きく左右される。地政学リスクの影響だけではない。特に、自然変動型の再エネのシェアが拡大するほど、天候要因によるインパクトも大きくなる。欧州で発生したことは、ある意味で世界共通のインプリケーションを持つ。電力需給逼迫は燃料としてのガス・LNG市場への影響を及ぼすことも留意が必要だ。欧州ガス市場では、ガス在庫の低下傾向が現れており、ガス価格は上昇基調にあった。ロシアとウクライナのガス通過契約の行方にも市場は神経質になっていたところである。今後の気温・天候要因の影響と共に、欧州のガス市場、そしてLNGスポット市場への影響にも注目していく必要がある。

小山堅

エネルギー基本計画で、再エネも原子力も、共に脱炭素電源として最大限活用していく方針が示されたが、その背景には、長期的な電力需要増加への対応の重要性に関する認識がある。これまで、日本では経済の成熟化、人口減少などの見込みの下で、長期的に電力需要は縮小方向に向かうものと見られてきたが、生成AIやデータセンターの増加もあって需要拡大の方向へ見通しが大きく変わったのである。問題は、電力投資はリードタイムが長いため、将来の電力需要増加に備えて、今からしっかりと準備をしていく必要があることである。だからこそ、この記事のタイトルの通り、技術・設備への投資をしっかり促進していく必要があるのである。

小山堅

第7次エネルギー基本計画の素案では、2040年に向けて発電電力量が現状から増加していく姿が示され、それを再エネ・原子力などの脱炭素の「国産」電源で出来るだけ賄うという基本方針が示されることになった。現行の第6次計画策定の際は、カーボンニュートラル実現が最大のポイントであったが、今回の議論では、エネルギー安全保障が重視され、国際エネルギー情勢の不透明性や地政学的緊張の高まり、国内電力需要増大の可能性への対応、世界の分断の深刻化といった新情勢にも対応するエネルギー政策が求められることになった。再エネを最大電源としつつ、原子力も最大限活用するとしたことは従来の政策から一歩踏み出す重要な内容である。

小山堅

今回の決定はある意味では想定の範囲内であり特段のサプライズは無かった。現在の石油市場の需給ファンダメンタルズから見て、協調減産延長と自主減産の段階的解除(段階的増産)の開始を先送りする、ということはやむを得ない決定であったといえるだろう。世界経済、とりわけ中国経済の先行きに不透明感があり、世界の石油需要鈍化の可能性が残り続けていること、そしてトランプ政権の下で米国の石油増産が実際にどうなるかを見極めていく必要があること、などが重要な考慮点となったのではないか。石油市場関係者は、今回のOPECプラスの決定を踏まえ、年末から年初以降の国際石油市場で実際に何が起きるのかを注視していくことになる。

小山堅

中国の不動産不況は極めて深刻な構造的問題として、中国経済の下押し要因として今後も影響を及ぼし続ける可能性が高い。日本もバブル崩壊後、長きにわたる苦境に苦しんだ。中国経済の世界経済に占める重要性を考えると、この問題は深刻だ。特にエネルギー市場においても同様であり、過去20年以上にわたって国際エネルギー市場での需要拡大の牽引車であった中国が経済低迷に苦しみ、需要鈍化が深刻化すれば、そのインパクトは大きい。2025年以降も中国ファクターによって、国際エネルギー市況は大きな影響を受け続けることになるだろう。この先の展開は要注意である。

小山堅

福島事故後、原子力発電所の再稼働は、九州、関西、四国など、西日本で実現してきた。炉型で言えばPWRの再稼働が先行してきたわけだが、先般、初めてのBWRの再稼働が東北電力・女川2号機の再稼働で実現した。BWRの再稼働が今後どうなっていくのかは、日本の原子力発電所再稼働を左右する極めて重要なポイントであり、その意味でも東電・柏崎刈羽の7号機、そして6号機の動向がカギを握ることになる。日本のエネルギー問題に関する「3つのE」課題に対応していく上で、安全性を確保した上での原子力の将来は最も重要なポイントである。関係者の最大限の努力に期待していきたい。

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