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[社説]中国に安心して行ける状況ではない

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日本人をはじめ多くの外国人が「中国に行くのは怖い」と感じている。いつどんな理由で取り調べを受け、拘束されるかわからないからだ。中国の習近平政権に、この異常な状況を一刻も早く終わらせるよう強く求める。

中国でスパイ行為の摘発を強化する改正反スパイ法が施行されて1年がたった。「国家の安全と利益」に関する情報のやり取りをすべてスパイ行為と認定する。そんな同法が、中国で活動する外国人にかつてない緊張を強いている。

何がスパイ行為にあたるのか定義はあいまいだ。ふつうに暮らしていても、当局の恣意的な判断でスパイにされるのではないかという不安をぬぐえない。

7月からは、国家安全機関の法執行に関する新たな規定の運用が始まった。当局者に、個人が持つスマートフォンなどの情報機器を調べる権限を与える内容だ。緊急時に責任者の許可を取れば、当局者は警察証などを示すだけで情報機器を検査できる。

外国人が中国に入国する際、スマホやパソコンの情報をみられたり、取られたりするのではないかとの懸念がくすぶる。これではうかつに情報機器を中国に持ち込めない。中国への渡航をためらう外国人が増えるのは当然だ。

2023年3月にスパイ容疑で拘束されたアステラス製薬社員の日本人男性は、解放の見通しがまったく立っていない。

中国側は「確たる証拠を得ている」と繰り返すだけだ。男性がどんなスパイ行為をはたらいたのかは、いっさい明かしていない。一部の日本企業は社員の安全を保てないとして、いまも中国出張を制限している。

6月には江蘇省の蘇州市で、日本人学校のスクールバスを中国人の男が刃物で襲撃し、日本人の母子らを切りつける事件が起きた。身をていして日本人を守り、亡くなった中国人の女性に心からの感謝と哀悼の意を表したい。

それなのに、SNS上では女性らを「日本のスパイだ」などと批判する言説が流れた。中国で外国人排斥の機運が芽生えているのは気がかりだ。

李強首相がいくら「中国は開放された大市場だ」と対中投資を呼びかけても、説得力がない。このままでは、外国人にとって中国はふつうにビジネスができる場所でなくなる。習政権は状況の深刻さを認識すべきである。

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