Jリーグは生まれ変わる まずは組織の大改革
11月1日、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の法人設立から25周年を迎える。10クラブで発足したリーグはJ1~J3の53クラブ編成へと成長した。
発足当初のブームが去り、各クラブが身の丈の経営を目指した時代があり、有力選手が欧州の各国リーグに渡るようになった。
発足から4半世紀を経て、Jリーグを取り巻く環境は大きく変化し、デジタル化、国際化といった時代の速い流れに迅速に対応しなければならない時代が来ている。
Jリーグはいまこそ、足元を固め直し、組織改革を進め、再成長を目指さなくてはならない。
Jリーグには各事業をサポートする関連会社が6社ある。そのうちの一つであるジェイリーグエンタープライズの株主は「オリジナル10」と言われるリーグ発足当初のクラブ(横浜フリューゲルスを除く)でいまだ構成されている。また、メディアがこれだけ多様化しているのに、Jリーグメディアプロモーションの株主は会社設立当時の顔ぶれのままだ。
これまでは、それぞれの会社に社長がいて、それぞれが社員を採用していた。トップが別なので関連会社のベクトルを合わせにくく、職場がたこつぼ化し、社員のキャリア開発面でも問題があった。関連会社をここまで切り分けてもメリットは少なく、むしろ6社の間でフレキシブルに人事交流をしたほうがいい。
■ヒト、モノ、カネの一元化の先にあるもの
今年4月、保険会社のジェイ・セイフティを除く5社の社長を1人が兼務する体制にした。トップは1人でいい。さらに総務、経理、人事は共通のメンバーが6社分を担当するようにして、神経系統を統一した。これが組織改革の第1フェーズだった。
次に関連会社の株主構成を見直したい。株式の買い取り交渉を検討している段階だが、今後、目指すべき方向とベクトルを合わせたいと思っている。
改革の第3フェーズとして、来春には関連6社の上にホールディング会社を設立する計画だ。ここまでいくと、ヒト・モノ・カネを一元化してビジネスを進める事業会社の形が整う。
「スポーツを産業として発展させよう」という掛け声が大きくなっているが、そのためには激しい時代の変化をキャッチアップできる人材や技術集団が必要であり、そうした組織をマネジメントできるトップがいなければならない。
英国の動画配信サービス大手のパフォーム・グループと10年で総額2100億円の放映権契約を結んだのを機に、今後は試合の中継のための映像をリーグ主導で制作する。そのためには専門のエンジニアやプロデューサーを擁する必要がある。デジタルインフラの整備のためにも専門家が必要だ。
アジアを中心とした海外へのビジネス展開にもさらに力を入れていく。Jリーグはアジアにおける露出の増加、マーケットの拡大も目指している。東南アジアなどにリーグの拠点を設ける必要も出てくるかもしれない。そのためのグローバルな人材をそろえなくてはならない。
公益社団法人であるJリーグの使命は「いいフットボールをする」ことや、「地域に貢献していく」こと。一方で、来春つくるホールディング会社のもと事業会社はリーグからの委託を受けてビジネスを進めていくことになる。
事業会社には、資本構成をシンプルにしたうえで、プロフェッショナルな人材を時代に合わせてそろえていき、フレキシブルに人事交流を進め、機動的に組織を組み替えられる体制にしたい。
スポーツの産業化を進めるには、競技運営に携わる人材だけでは厳しい。これを機に組織を大きく変貌させるつもりだ。
そのうえで各クラブに対する「シェアードサービス」の概念も提供していきたい。たとえば経理についての共通したシステムをつくり、クラブに活用してもらうようにする。
■海外展開や人材育成などリーグが支援
公式サイトのプラットフォームの統一化などデジタルインフラの整備では、すでにシェアードサービスに着手しているともいえる。
各クラブが重複投資する必要のないもの、アウトソーシングできるものについてはリーグが一括して管理したほう効率的である。
Jリーグはプロスポーツの経営人材を養成するため、立命館大学と共同で「JHC教育・研修コース」を設立し、今年は2期生が学んでいる。このコースもリーグがクラブに代わって人材養成を行っていると解釈してもいいと思う。
アジア戦略を進めるクラブが東南アジアのクラブと提携し、事業を展開する際にもJリーグの国際部が仲介役を果たしている。これもシェアードサービスの一つだろう。
リーグはクラブを管理する存在という面が強かった。もちろん、クラブライセンスの認定など、今後もその機能を果たしていく。しかし、それだけではなく、クラブの手の回らないところをリーグが支援していくようにしたい。
その前提として、リーグの関連会社がプロフェッショナルな人材をそろえて事業会社としての組織を整え、力をつけていかなくてはならない。
(Jリーグチェアマン)