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ホームの地名 名乗らぬガンバ(とことんサーチ)

「吹田=大阪」、万博の名残? 同一視、ファン違和感なく

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休日の息抜きにガンバ大阪の試合観戦に向かう途中、「市立吹田サッカースタジアム」(大阪府吹田市)の案内表示が目に入った。そういえばガンバのホームスタジアムは吹田市にあるのに、なぜ「ガンバ吹田」じゃないんだろう。大阪市にはセレッソ大阪がある。今更ながらの疑問を関係者やサポーターに尋ねた。

9月25日、同スタジアムのゲート付近。FC東京との一戦を前に、意気揚々とサポーターがやって来た。青と黒のユニホーム姿の人も多い。背後に日本万国博覧会(大阪万博)のシンボル「太陽の塔」がそびえ立つ。

「なぜ『ガンバ吹田』ではなく『大阪』なのか疑問に思ったことはあるか」。40人にアンケートを取ると、実に95%が「いいえ」と答えた。前身の「松下電器産業サッカー部」の頃から30年来、応援しているという吹田市の会社員、中谷敦さん(57)は「考えたこともない」ときっぱり。

1993年のJリーグ発足当初、「特定の市町村をホームタウンとして定める」との規約があった。今では複数の自治体を挙げる例が多いが、当時はおおむね本拠地が1カ所。「ホームタウン名イコールチーム呼称、という決まりはなかった」(Jリーグ広報)というが、当時の10のうち9クラブがホームタウン名をチーム呼称に入れている。

なぜガンバだけ「吹田」を採用しなかったのか。ガンバ事業部長で松下時代のチーム主務としてJリーグ加盟にかかわった伊藤慎次さん(49)が「当時加盟した関西のクラブはガンバだけ。関西を代表するという自負があった」と教えてくれた。米映画「ジョーズ」から取った「大阪ジョーズ」の呼称も検討されたが、「大阪、に変わりはない」(伊藤さん)。

Jリーグ側にも違和感はなかったようだ。プロリーグ設立準備室の事務局長としてJリーグ発足に携わった佐々木一樹さん(65)は「疑問を投げ掛ける声は関係者の誰からも出なかった」と振り返る。

誰もおかしいと思わなかったから、というのが真相か。どうもすっきりしない。首をかしげていると、ガンバの伊藤さんが気になることを口にした。「大阪万博を『吹田万博』とは言わないでしょう」

1970年に吹田市で開かれた大阪万博は高度成長期の一大イベント。当時の「空気」について、元吹田市職員の柿本信行さん(69)は「『世界の中の大阪』という意識が強くなった」と表現する。府外で「万博があった吹田市の職員です」と自己紹介すると、決まって「あー、大阪の」との反応。そういえば吹田スタジアムができる前のガンバのホームは万博記念競技場。チーム呼称の「大阪」がすんなり受け入れられる背景には万博があったということか。

もう一つ、Jリーグ発足時にガンバの選手だった大阪産業大の佐藤慶明准教授(47)が「選手としても違和感はなかった。関東のチームが多く、対抗心が強かった」と興味深い話をしてくれた。事実、ガンバのサポーターがライバルとして挙げるのは、実力やチームカラーなどを総合して「浦和レッズ」が最多。もっとも「キタのガンバ、ミナミのセレッソ」というローカルな対立関係もあるが、野球の「巨人対阪神」のような東西対決は分かりやすい。

「地域に根差したプロスポーツの意義は地域振興と青少年の育成。名前はそこまで重要じゃないのでは」。佐藤准教授はそう話したが、ガンバ大阪の呼称には相応の歴史や意味が込められているように感じた。記者はレッズの試合を見て育った。ガンバサポーターに「埼玉出身です」と伝えると苦笑いされたが、サッカー談議が盛り上がったことは言うまでもない。

(大阪社会部 川井洋平)

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