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ソフトバンク、「アローラ・ショック」再び

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ソフトバンクグループに対する米証券取引委員会(SEC)の調査が入ったとの報道を受け、株式市場には衝撃が走った。同社株は一時、前日比3%安まで下落。調査対象とされる前副社長、ニケシュ・アローラ氏はすでに退任したとはいえ、一時は孫正義社長の後継者と目された人物。調査の進展次第では、ソフトバンクは思わぬダメージを受けかねない。

終わったはずだった……

「ソフトバンクが今後、成長するための基盤をつくれたと自負している」。アローラ氏は6月22日の株主総会で自身の功績をアピールし、ソフトバンクと孫社長に別れを告げた。7月1日からは顧問という立場に変わるが、ソフトバンクとアローラ氏の関係は終わりを迎えたはずだった。

アローラ氏は2014年秋にソフトバンク入り。米グーグルの最高事業責任者兼上席副社長だったが、孫正義社長が自ら口説き落して副社長に登用した。その後は海外企業の買収を取り仕切り、2年間で245億円に上った多額の役員報酬でも注目を集めた。

着実に結果を出しているように見えたが、22日の株主総会前日になって退任を発表。社員はもちろん、株式市場を驚かせた。

ソフトバンクは、アローラ氏の退任について「孫氏が社長続投に意欲を持ち始めたため、アローラ氏がソフトバンクを去る決断をした」と理由を説明。アローラ氏の退任を巡る騒ぎはいったん落ち着いたが、今回のSECの調査で再び、ソフトバンクも投資家も「アローラ・ショック」に見舞われた。

米ブルームバーグによると、SECがアローラ氏に利益相反や他の疑わしい行為がなかったかを調べているとされる。伏線はあった。ロイター通信によると、今年に入り、投資家グループの代理人を務める法律事務所がソフトバンクに書簡を送付していたからだ。

焦点は、アローラ氏が米投資ファンドの上級アドバイザーだったことによる利益相反の有無。ソフトバンクに調査を求めた。これに対し、ソフトバンクは取締役会の独立役員で構成した特別調査委員会で調査した上で、「問題なし」という姿勢を示していた。

終わらない余波

ソフトバンクは30日、SECの調査に関する報道について「コメントはない。当社取締役会の独立役員で構成される特別調査委員会は法律顧問の協力を得て、株主とみられる方からの申し立て内容について調査を実施し、委員会は申し立て内容は評価するに値しないものであると結論付けている」との声明を出した。

アローラ氏はソフトバンク入りした後、持ち味の経営判断のスピードを見せつけてきた。インドのネット通販大手スナップディールなどを次々と傘下に収め、M&A(合併・買収)戦略を推進。その一方で、今年に入ってからは中国のアリババ集団株やフィンランドのスーパーセル株を売却し、2兆円超の資金調達に成功した。

そんなアローラ氏の経営手腕を使い、グローバル企業としての地歩を一気に固めようとしたソフトバンク。アローラ氏の退任は、そんな孫社長の計算を狂わせ、経営体制を含めた将来プランを一から見直すことをソフトバンクに迫った。

それに加えて、なかなか鎮まらないアローラ氏を巡る疑惑。孫社長が2年前に決断したスカウト人事の余波は、アローラ氏が去った後も続いている。

(中尚子、武類雅典)

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