ファンタジー小説編
公開テストの朝、アパートのドアを開けると、廊下に巨大なインド人が立っていた。
身長は2m近い。でっぷりと太っているので、100kgは優に超えているだろう。
『I love science.』というロゴの入ったTシャツが汗で肌に密着している。
「グプタと呼んでください」と男は言った。
「時間がありません。加藤さん、行きましょう。TOEICの世界をvisitします。あ、このvisitは他動詞です。自動詞のgoの場合はtoが必要です」妙ななまりのある日本語で彼は早口にまくし立てた。
ホラー小説編
私があの時、TOEICを一緒に受験しよう、と誘ってさえいなければ、彼が殺されることもなかったし、私がこうしてグプタから逃げ回ることもなかったのだ。そう思うと果てしない後悔の念に襲われるが、こうしている間にもグプタは確実に私の居場所に迫っているはずだ。
突然、部屋のドアを叩くノックの音がした。
「コンコンコン、何の音。グプタの音。加藤さん、グプタです。リーディングセクションの制限時間は75分です。まだあと30分あります。あきらめないで逃げてください。逃げ切れない場合は、あなたのボーイフレンド同様、ご退場いただくなどの措置を取ります」
恋愛小説編
私がグプタと出会ったのは、公開テストの日の朝だった。
試験会場の最寄り駅の改札を出て、立ち止まって受験票に印刷された地図を眺めている私に、「TOEICですか」と声をかけてきたのがグプタだったのだ。
声のした方に目をやると、『I love science.』と書かれたTシャツに、短パンとビーチサンダル姿のインド人が立っていた。どう見てもこれからTOEICを受験しようという格好には思えないが、にこにこしながら 手に持った受験票をひらひらさせている。
青春小説編
明山大学 TOEIC部
一年 加藤ぬり恵
部室の壁に掛けられた木の名札を見るたびに、「なんでこんな部に入っちゃったんだろう」と思う。大学に入ったら憧れのキャンパスライフを満喫するはずだったのに。これじゃあ部活に明け暮れた高校時代と何も変わらない。
「おい、加藤。ぼーっとしてんと、しっかり音読せんかい。壁を見て悟りが開けるのはお釈迦様くらいやで。お前みたいな凡人が穴が開くほど見つめなあかんのは壁やのうてキョウ・カ・ショ。わかったら公式問題集の音読30分!」
関西出身のグプタ先生は、インド人と日本人のハーフらしい。TOEIC部の監督で、自分の研究室を部室として開放してくれている。それはありがたいんだけど、入部してもうすぐ三か月になるのに、毎日単語の暗記と英文の音読を延々と続けているだけだ。こんな調子で本当に進級条件のTOEIC500点をクリアできるのだろうか。
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大いに期待してます。あとTEXさんならギャグ小説とミステリ小説も書けますよね。大丈夫です!天才TEX加藤ならできるでしょう。皆さん大いに期待しましょう(笑)。
「青春小説編」がもっとも印象的でした。
「TOEIC部」!シンプルですがインパクトがあります。
このブログを訪問するような人は、
もう「TOEIC部員」ですね。
部員が集まって合宿したりして。
あ!前田先生とHUMMERさんが
もうやってらっしゃいますね!
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