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『水路上観察入門』、書きました

4月27日、『水路上観察入門』(KADOKAWA)を上梓することとなりました。
そのお知らせと、どのような本なのかを、つづりたいと思います。

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水路上とは、暗渠、ただし地上部分を主に指すものと思っていただければと思います。


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原稿を書いている時期、概ね世の中はCovid-19の影響で、これまでとは異なる行動パターンを人々は余儀なくされていた。あるいはこの本が出た後もそうなのかもしれない。2020年春から夏にかけ、外を出歩くことはできるだけ控えたいと思いつつも、わたしは何度か暗渠を歩きに出掛けた。そこで毎回認識されたのは、「こういうとき、人は開渠沿いの道を歩く」か、「緑道を歩く」ということだった。見たことのないような人の群れが、主に開渠沿いを、歩いたり走ったりしていた。


開渠や緑道から分岐していく支流の暗渠はたくさんあるし、開渠が見えるような近さで並行してはしる、用水路の暗渠だって存在する。しかし、それらの支流や用水路の暗渠(そここそがわたしのホームグラウンドである)に足を踏み入れた途端、人はいなくなるのだった。健康のための散歩やランニング、かつ、ソーシャルディスタンスをとって。という状況に最も適合している路なのに、人がいない。つまりそこは、路であることを知られていない、「路であっても路でない」と場所なのだろう。


「水路上」とは、「路であって路でない」。だからこそ人は訪れず、快適に歩ける。しかし、「水路上」の魅力は、それだけではない。

(↑ここまでは、「はじめに」のボツになった部分。)


本書の前半では、わたしが考える「水路上」の魅力について、書いていく。
これまでの「暗渠」にかんする記述と少し変えているのは、水路上にある「アイテム」であるとか、「1つの場所」に限って深堀りをしている点だ。
深堀りして書く、というのはどうもわたしの性質であるらしく、気になると調べ始め、すると楽しくなってきて、気が済むまで調べてしまう。今回の本では、あまり知られていない資料や、いくつものインタビュー(個人からお店からお役所まで、とっってもお世話になりました!)が背景にあるので、役に立つかどうかはさておき、暗渠にまつわる他には無いような資料にもなっている、と思う。
役に立つかどうかは、さておき(2回言いました)。


そのようなわけで、前半は「水路上」を「観察」しながら気になったことへの読み解きを、1節につき1事例ずつ、紹介していく。以下、各節のキーワードとともに、全体(前半のみ)を概観する。


明らかな街角の違和感から入り、読み解く第一章。
<長細> 長すぎる公園への違和感とそこにある歴史。事例:西小山の立会川
<配列> 街角や地図上にある不思議な空間。事例:高島平
<遊具> 変わった遊具が隠し持つ秘密。事例:遊具2種


水路上のもつ特徴を事例から考える第二章。
<裏側> 裏路地よりもさらに裏、その魅力とは。事例:小沢川
<境界> 水路上にできた境界のもつ魅力とは。事例:谷田川・藍染川
<複雑> 解けない謎を抱えるのも良い、解けると本当に面白い。事例:竪川


一見そこまで変ではないけれど、気づいたらその場所全体から浮かび上がる、強い水の記憶を描いた第三章。
<謎池> ちょっとした違和感の先に知られざる歴史。事例:今川橋
<弁天> 郷土史上の不思議さの先にあった個人の営み。事例:代官山の弁財天


そしてバトンタッチのコラムを挟み、後半へ。
後半は共著者の高山氏が、「水」の視点から今ある風景を見た「路上観察」をいきいきと展開する。そちらの説明は、高山氏に譲りたい。


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こんな本です。
(カドカワさんのページはこちら。)


できるだけ書店さんで買って欲しいという思いがありますが、感染状況が悪化しているため、なかなか、これまでのような書店さんと連携したイベントが組めません。購入者用のツアーも、対面のトークも難しい。企画しながらもあれこれ変化が生じてしまい、去年の暗渠パラダイス!の発売時を思い出すようです。


せめて近所の本屋さんで、あるいは知っている本屋さんの通販で、買っていただけたらと思い、販促用しおりなどを用意しました。その情報については、整い次第お知らせします。


『水路上観察入門』、どうぞよろしくお願いいたします。

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コメント

こんにちは。初めてご連絡差し上げました。スエダと申します。先生の本は何冊か楽しませて頂きました。唐突で恐縮ですが、今月末に11-1で行なわれます展示会にはいらっしゃいますでしょうか?可能であれば、新作を購入させていただきサインを戴きけますと、暗渠探索に力が入ると思っております。板橋区在住で、先日は板橋マニアでご紹介の坂下三丁目の親柱を見て感激しました。

投稿: 末田武寛 | 2022年2月 4日 (金) 14時56分

コメントをどうもありがとうございます。また、拙著を読んでいただきまして、誠にありがとうございます。
11−1での展示会には、大変申し訳ありませんが、出店予定がございません。板橋の展示で大変お世話になったいたばしデザイン同好会さんが出展されるようなので、ぜひ彼らの新作をお楽しみいただければと思います。

投稿: nama | 2022年2月16日 (水) 11時21分

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