1980年発表、
サザンオールスターズのサード・アルバムです。このアルバム、裏ジャケットに猫の顔が5つ写っていて、それぞれの下に「Keisuke Kuwata」とか「Yuko Hara」とか書いてあるんですよ(^^)。こういうユーモアが最高に面白いのと同時に、このユーモアがコミックバンドすれすれのところにバンドを追いやった要因のひとつでもあったんじゃないかと…いやいや、そのユーモアを含めサザンですね!
ただ、なんでこういう事をやったのか、なんとなくわかる気もしました。桑田さん自身がそういうユーモアにあふれる人だったというのは勿論あるんだろうけど、やらないわけにはいかなかった事情もあったんだろうな、みたいな。やっぱり演奏のうまいバンドじゃないんですよね。それは音楽も…このアルバム、
「涙のアベニュー」という素晴らしいバラードが入ってますが、アレンジにしても何にしてもフィフティーズそのままでもあります。こうした「○○風」という傾向は他の曲にも言えて、常に何かの真似に聴こえました。
ロックやポップスが好きで、サークルに入って、好きな音楽をカバーして、自分でも曲を書いてみて…みたいなバンドがいたとしたら、好きだったバンドや曲のコピーは自然だと思うんです。でもそれってアマチュアのうちはいいけど、自分の名前を出して金をとるプロの側に回ったら、「○○風」はだんだん通らなくなっていくじゃないですか。それが顕著になってきたのがこのアルバムなのかも。
ボブ・ディランも
ビートルズも、最初は他の人の曲をたくさんやっていましたが、サード・アルバムでは全曲オリジナルになっていましたよね。それはカバーでないという事でなく、自分なりバンドなりのアイデンティティが確立された瞬間である、という意味です。そう考えると、ロックやポップスのグループのサード・アルバムって、アイデンティティの確立が迫られる頃合いなのかも知れません。
口でいうのは簡単ですが、でも物真似から脱する何かがないとしたら、何か他のところに自分を求めに行かざるを得ないんじゃないかと。このアルバムには「恋するマンスリー・デイ」なんていうレゲエのビートを真似た曲も入ってましたが、レゲエ的な何かがこのバンドの内側から出てくるはずもなくて、形だけ似せて取り繕ってるだけに聴こえました。そういうのって真面目にやればやるほどボロが出るというか。
セカンド・アルバムまではバンドの一体感みたいなものを感じたんですが、このアルバムになると悪い意味で慣れてきたというか、変な意味でお仕事になってきたというか、リーダーに言われた事をやっておしまい、みたいな演奏に感じました。それがうまければまだいいんですけど、うまくないからもう…。サザンには「音楽が好きで好きでたまらない」といういい意味でのアマチュアイズムを失って欲しくなかったと思ってしまったのがこのアルバムで、サザンってバンドとしてはセカンドまでだったのではないかと感じます。
このアルバムで僕がいいと思ったのは「涙のアベニュー」と「C調言葉にご用心」の2曲でしたが、この2曲だけだったらベスト盤『バラッド』にも入っているし、このアルバムはもうお役御免かな…。
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