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安藤美姫「もう心の揺れは関係ない。だから優勝できた」

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4月のフィギュアスケート世界選手権(モスクワ)で、2度目の優勝を遂げた安藤美姫(トヨタ自動車)。「優勝よりも、シーズンを通して大きなミスなく演技できたことが、すごく良かった」と4年ぶりの世界女王の感想を語っていました。その後、欧米でショーに出演したり、新しいエキシビションナンバーを作ったり、忙しい日々を過ごしていましたが、6月中旬に帰国。改めて世界選手権を振り返るとともに、新しいショーナンバーなどについて話してくれました。

欧米スケート界の懐の深さ感じる

世界選手権を終えて、すぐにロシアのサンクトペテルブルク、続いてカナダでアイスショーに出演しました。欧米のショーはテーマに沿って行うことが多く、サンクトペテルブルクでは、東日本大震災の被災者へささげるショーでした。

サンクトペテルブルクで育った2006年トリノ五輪金メダリストのエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)選手らも出演したのに、当たり前のように、日本人の私を"大トリ"にしてくださいました。そういうとき、欧米スケート界の懐の深さを改めて感じました。

自分の演技で力を感じてくれれば

震災のとき、私は福岡にいて、揺れは感じませんでした。一緒に練習していたスペイン、イタリア、ロシアの選手たちに、各国連盟や親から電話がかかってきて、地震が起きたことを知りました。

テレビのニュースなどを見て驚くとともに、大きな衝撃を受けました。リンクで氷に乗っていても何となく落ち着きません。そんなとき、インターネットを通じて寄せられたファンのみなさんの声に本当に救われました。

モスクワの世界選手権では、自分の演技から(被災した皆さんが)力を感じてくれたらいいな、って思って滑りました。試合後もいろんなメッセージをいただき、それが優勝よりもうれしかったです。

07年の1度目の優勝は思いもよらぬものでしたが、今回はメダルを狙って、それを意識しながら自分の演技をして、それで結果がついてきました。2度の優勝を比べれば、今回のように目標を持って試合に臨んでいたか、いなかったか、という違いがあると思います。

無駄な経験は1つもない

4年前はケガで2週間ほど氷に乗れず、ジャンプ練習を始めたのも本番会場に入ってからでした。その状態でも演技ができたことに納得していたのに、優勝した事実だけが話題になりました。仕方ないことですけれど、そのギャップがつらかったですね。

昨シーズンは初めて、具体的にメダルを目標にしました。昨年くらいから、スケーターとしての自信がちょっとついてきたからです。年齢を経て徐々に成長するものだし、いいことも悪いことも、無駄な経験は1つもなかったと思います。

世界選手権での大きなミスは、フリーで2回転半―3回転の連続ジャンプの3回転が2回転になったこと。あれは緊張ではなく、力み過ぎたのと、カーブが通常とやや違ってしまったので、空中で体を開いたのが原因です。

あのまま3回転しようとして体を締めていたら、回転不足で転倒していたと思います。

「氷に乗った瞬間、気持ちを切り替え」

バンクーバー五輪のシーズン(09~10年)くらいからでしょうか。私は気持ちのアップダウンが比較的大きい方かもしれませんが、そうした心の揺れが演技に影響することがなくなってきました。

自分の気持ちをスケートに伝えることは大切だけれど、気持ちのアップダウンで滑ってはいけません。普段から氷に乗った瞬間、頑張って気持ちを切り替えるように心がけた成果かな、と思います。モスクワでも、なかなか強い気持ちを持てなかったんですよ。

ショートプログラム(SP)のミスを引きずらなくなったことも大きいですね。SPのミスは致命傷になりかねません。SPでで納得のいく演技ができなかったときは気持ちが落ち込んでいたのですが、五輪シーズンの「クレオパトラ」くらいから、「フリーで挽回できる」って思えるようになりました。

考えなくてもいいことを考え…

技術的に安定してきたし、ジャンプ以外でも評価されるようになったからです。もう曲の力に頼らないで、自分が滑っているから曲が流れているんだって思えるようにもなりました。

例外が昨年のバンクーバー五輪。SPで3回転―3回転の連続ジャンプを失敗し、出遅れてしまいました。最終滑走だったし、3回転―2回転でも良かったと思いましたが、五輪の大舞台。(かつて跳んでいた4回転ジャンプを回避するようになり)「なんだ跳ばないんだ」という声が耳に入っていたこともあり、それが(逃げといわれているようで)トラウマになっていました。

考えなくてもいいことを考えて、(3回転―3回転を選択して)失敗してしまった。誰にも会いたくなくて、1日中、自分にこもっていました。

悔いの残らないようにしたい

トリノ五輪の後、人に何か言われることに慣れ、(もちろん傷つきはしますけれど)引きずらなくなっていました。09年くらいから、周囲に関係なく、自分をコントロールできていたのに、肝心な五輪の舞台で出てしまいました。

それからですね。「もう、自分のためにスケートをしよう」「自分の人生、悔いの残らないようにしたい」と心底そう思いました。

周りの人の3回転―3回転ジャンプを期待する声はありがたいですけれど、実際、演技するのは自分。周囲の期待によって、自分の選択が惑わされることはありません。

ループで挑戦

日本では、ジャンプに注目されがちですけれど、フィギュアはジャンプ以外の要素もありますからね。

もちろん3回転―3回転の連続ジャンプは頑張って練習します。2つ目の3回転はトーループでなく、ループ(右足1本で跳ぶ)です。ループは基礎点は高いですけれど、回転不足をとられやすい。でも、これからも挑戦していきたいです。

「ミキに似ている」

新しいショーナンバーは「千の風になって」の英語版と、映画「ブラック・スワン」です。

この映画は見た瞬間、ナタリー・ポートマンが演じたニナ役(「白鳥の湖」の主役に抜てきされるが、プレッシャーで幻覚や妄想に襲われるようになる)に、親近感を覚えました。

ニコライ(・モロゾフコーチ)も、「ミキに似ている。クラシック音楽でなく、パーソナリティーを表現している曲だから、やってみよう」って言ってくれました。5分(フリーの演技時間は4分)もあるんですよ。頑張って滑りますので、楽しみにしてください。

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