事故物件の告知、病死は不要に 国が不動産契約で指針案
国土交通省は30日までに、入居者らが死亡した「事故物件」について、不動産業者が売買、賃貸の契約者に告知すべき対象をまとめた初めての指針案を公表した。病気や老衰、転倒事故による死亡は告知の対象外と明記。殺人や自殺、火災による死亡は告知すべきだとしたが、賃貸は発生から3年経過すれば不要とした。
6月18日まで一般から意見を募った上で決定する。
事故物件は宅地建物取引業法で告知の必要があるが、明確なルールがなく具体的な扱いは業者の判断に委ねられていた。そのため入居後、訴訟に発展する例もあった。指針に強制力はないが、業者に周知してトラブルを未然に防ぐ狙いがある。
指針案の対象はマンションや一戸建てなどの住宅。居室のほかベランダ、廊下など日常的に使う共用部を含め、入居者以外が死亡するケースも対象になる。
病気や老衰の自然死、入浴中の転倒や食事中の誤嚥(ごえん)といった不慮の事故死は、原則告げる必要はないとした。「当然予想され(契約の)判断に重要な影響を及ぼす可能性は低い」ためで、病死を対象に含めると単身高齢者の入居受け入れに影響することにも配慮した。
ただ死後、長期間発見されず害虫などが発生し、特殊清掃が行われた場合は告知の対象とする。
一方、殺人や自殺、火災やガス漏れによる事故死、原因不明の死は告知を求める。賃貸契約は過去の判例などからおおむね過去3年間の事案としたが、売買物件は参考ケースに乏しく期間を当面限定しない。
対象の事案があったかどうかは、不動産業者が通常の物件情報の収集範囲内で家主や管理業者に確認。周辺住民への聞き取りなど自発的な調査の義務まではないとした。
指針案は専門家を交え、過去の判例や取引ケースなどから作成。隣接住戸や前面の道路、搬送先病院での死亡などは今回の指針案の対象外で、今後検討を続ける。
〔共同〕
「事故物件」告知に関する指針案のポイント
一、病気、老衰、転倒や食事中の誤嚥といった事故による死亡の告知は不要。死後、長期間発見されず特殊な清掃が行われた場合は告知する。
一、殺人や自殺、火災などによる死亡は告知を求める。賃貸物件は3年経過すれば不要とする。
一、対象は住宅で、居室のほかベランダ、廊下など日常的に使う共用部も含む。
一、隣接住戸や前面の道路などは指針案の対象外で検討を続ける。〔共同〕