歌舞伎「摂州合邦辻」、継子への不義の結末 上村以和於
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『摂州合邦辻(がっぽうがつじ)』の幕が開くとすぐ目につくのは、「合邦庵室(あんじつ)の場」というその庵室の一隅に安置されている大きな木彫の閻魔(えんま)の首。もうひとつは下手の木戸の外に一本立っている高い柱だ。幕開きのひとくさりの後、老母が出てきて燈籠に灯を入れると細綱をたぐってこの柱の高く迄吊(つ)り上げる。燈籠は盆の供養に供えるためだが、高いところに吊るすことによって、霊魂が下界に降りてくる...
長年にわたって歌舞伎の舞台を見続けている演劇評論家の上村以和於氏が、名作・名場面に隠されたエピソードや登場人物の横顔を詳しく紹介します。