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アンモニアから水素、安価に 東京工業大学が新触媒

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東京工業大の北野政明教授らは高価な金属を使わずにアンモニアを水素に分解できる触媒を開発した。触媒に使うニッケルの価格はアンモニア分解に一般的に使われるルテニウムに比べて500分の1程度で済む。水素エネルギーの貯蔵や輸送にはアンモニアから水素を取り出す工程が必要になる。脱炭素の推進に重要な技術とみて実用化を目指す。

水素は気体の状態では体積が大きく、そのままでは輸送しにくい。液化水素として運ぶにはセ氏マイナス253度に冷却する必要がある。輸送や貯蔵のコストが課題となっており、水素をメタンやアンモニアなど輸送しやすい化合物に変換する水素キャリアの研究開発が進んでいる。

ただ、アンモニアを水素に効率よく分解するには高価な貴金属であるルテニウム系の触媒が必要になる。低コスト化には安価な金属を使った触媒が求められている。

従来のニッケル系触媒では、反応時にセ氏800〜1000度の高温が必要で、大気や水などに触れるとすぐに劣化する欠点があった。

北野教授らは2021年にカルシウムイミドとニッケルを組み合わせて従来より比較的低温で反応する触媒を開発したものの、大気中に1時間程度さらすと反応性能が半減してしまった。

今回、「六方晶チタン酸バリウム」と呼ばれる酸化物に含まれる酸素イオンの一部を窒素イオンに置き換えた。そこにニッケルイオンを固定して触媒とした。六方晶チタン酸バリウムを酸化物のまま使った場合に比べて140度程度低いセ氏550〜600度程度で反応し、触媒を1時間水に浸しても乾燥させれば反応性能が変わらないことを確認した。

触媒の表面には「空孔サイト」と呼ばれる穴があり、アンモニア分子との反応を起こしやすくしているとみられる。鉄などニッケル以外の安価な金属に置き換えても高い反応性能が得られた。

東工大ではアンモニアの製造分野でも細野秀雄特命教授らを中心に新たな触媒を使った手法の開発が進んでいる。低温・低圧でアンモニアが製造できるため、再生可能エネルギーなどを活用したグリーンアンモニアを製造する小規模プラントの実現を目指している。肥料やエネルギーとしての活用などが想定されているが、水素が必要な場所で分解すれば水素エネルギーとしても使える。

触媒に生成したときの価格は不透明だが、ニッケル自体の価格はルテニウムに比べて500分の1程度と安価だ。鉄などを使えればさらに安くできる可能性がある。今後、反応温度を下げられる触媒の開発を進める。北野教授は「脱炭素社会の実現に向け、企業と連携しながらさらに開発を進めたい」と話す。

(鈴木卓郎)

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