サイバーの23年9月期、純利益78%減 「ウマ娘」失速
サイバーエージェントの業績が低迷している。1日発表した2023年9月期の連結決算は純利益が53億円と前の期比で78%減った。2期連続で減益となった。人気ゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」の急失速や主力のインターネット広告事業の採算悪化が響いた。
24年9月期はインターネットテレビ「ABEMA(アベマ)」の赤字縮小により3期ぶりの増益を見込むが、ウマ娘に代わる成長のけん引役はまだ見つからない。
「自社IP(知的財産)で採算の良いウマ娘は特大から通常ヒットに落ち着きつつあり、その反動が出た」。藤田晋社長は1日、サイトにアップした決算説明動画のなかで減益の理由を述べた。
売上高は1%増の7202億円、営業利益は64%減の245億円だった。セグメント別では、ゲーム事業の営業利益は62%減の227億円だった。
ゲーム事業は往年の競走馬をモチーフにしたスマートフォン向けの育成シミュレーション型ゲームのウマ娘がけん引してきた。21年のリリース以降、ダウンロード数は大きく伸び、漫画や音楽ライブなど版権ビジネスも好調だった。前の期はゲーム事業の利益の大半をウマ娘が稼いだとみられ、前期はその反動が出た。
アベマを含むメディア事業は「70億〜80億円」(大手証券アナリスト)とされるサッカー・ワールドカップ(W杯)放映権の獲得費用が響き115億円の営業赤字(前の期は124億円の営業赤字)となった。
ただMLBや英プレミアリーグの配信でスポーツファンが定着したことにより週間視聴者数が2000万人台を記録するなど堅調に延び、7〜9月期の営業赤字は6200万円まで縮小した。「アベマ単体の黒字化は先だと思うが、メディア事業としてはまもなく黒字化しそうだ」と藤田社長は話す。
一方、主力のネット広告事業の採算は悪化している。増収は維持したものの営業利益は25%減の183億円となった。この2年間で同事業の人員を1.5倍の2400人弱まで増やしたことで人件費がかさみ、営業利益率は4%台に低下した。小売店のデジタル販促を支援するデジタルトランスフォーメーション(DX)事業への投資も重荷となった。
24年9月期通期の連結業績予想は、売上高は前期比4%増の7500億円、純利益は50%増の80億円を見込む。アベマでサッカーW杯への巨額投資を実施した前期の反動でメディア事業の採算が改善する公算が大きい。藤田社長は「23年9月期の営業利益を底に増収増益を目指し、低迷している株価を上げていきたい」と強調した。
ウマ娘効果で過去最高を記録した21年9月期の利益水準(営業利益1043億円)を再び目指すには、新たなけん引役が必要となる。ゲームやアニメなどコンテンツ投資を継続し、そこからヒット作を生めるかが焦点となる。
サイバーも手をこまねいているわけではない。ゲーム事業では今期、「グランブルーファンタジー」の家庭用ゲーム2本の発売を予定するほか、11月下旬には人気タイトル「呪術廻戦 ファントムパレード」を配信する。藤田社長は「業績予想はコンサバティブ(保守的)で、ゲームがヒットすれば上振れ要因となる」とした。
9月に国内外で配信を始めたスマホゲーム「FINAL FANTASY Ⅶ EVER CRISIS」は計画を上回る滑り出しを記録した。ただ藤田社長は「ウマ娘ほどのヒットを期待されても困る」とくぎを刺す。次のけん引役を見つけるのは容易なことではなさそうだ。
(佐藤諒)
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