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アニマルヘルスにAI活用 ペットや家畜の診断・治療など

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CBINSIGHTS
人工知能(AI)の活用があらゆる分野で普及する中、アニマルヘルスでもスタートアップを中心にAIを活用したサービスが拡大している。ペットや家畜の病気の予防や治療だけでなく、最近は獣医が効率的に診断できるAIツールなどもある。CBインサイツは分野別にスタートアップの事例をまとめ、最近のサービストレンドを分析した。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

知っておくべきこと:

・ペットや家畜に医療や健康維持管理を提供する「アニマルヘルス」の需要が高まっている。アーリーステージ(初期)のスタートアップはAIを活用したツールなど、この分野を対象にした革新的な製品を開発している。

・新たなトレンドの注目カテゴリーは、獣医向けの診断プラットフォーム、先進医療、メタン排出削減ツール、AIを活用した診断・モニタリング、病気の予防・治療だ。

企業幹部の間で、コンパニオンアニマル(伴侶動物)や家畜を含むアニマルヘルスへの関心が徐々に高まっている。

テクノロジーや製薬/バイオテック、サステナビリティー(持続可能性)に基づくイノベーション(技術革新)の進歩により、アーリーステージ企業の活動も目にするようになっている。

ペットの健康維持管理の需要、病気の発生を減らす手段への注目、家畜の持続可能な生産の必要性が高まっているのも主な原動力だ。

この分野の企業は病気の予防から診断、治療まで様々な段階で動物の健康を推進しようとしている。最近のアーリーステージ企業の活動では、ペットや家畜の病気を迅速かつ効率的に診断できるAIツールも目に付く。

アニマルヘルスの新たなトレンドを紹介する。

ペットの健康

獣医療の検査を手掛ける米アイデックス・ラボラトリーズが2024年1〜3月期の決算説明会で言及したように、ペットの数が増えているのがこの市場が成長している主な理由だ。投資家は新たな診断法や治療法に関心を示している。

獣医向け診断プラットフォーム

既存企業はこの分野で事業を拡大しようとしており、世界のアーリーステージ企業は獣医が使いやすい診断プラットフォームに力を入れている。

仏Enalees:直近の資金調達(以下同)シリーズA、1600万ドル(6月)

・獣医が専門検査機関を介さずに診療所や往診先で使える分子診断検査を開発

・犬や猫、馬向けの検査を提供

Gekko Vet、フィンランド:インキュベーター/アクセラレーター、20万ドル(3月)

・獣医の臨床意思決定を支援するAI診断・治療ツールを提供

・23年11月には新興国に獣医向けプラットフォームを提供するため、仏ペットフードメーカーのロイヤルカナンと提携

グリーン・ベット(Green Vet、韓国):シリーズA、1080万ドル(23年12月)

・検体の回収、診断検査の実施、リアルタイムでの結果報告を提供する総合診断プラットフォームを運営

・将来的には医薬品とサプリにも進出予定

先進医療

投資家は犬や猫向けの免疫療法や幹細胞治療などの先進医療に関心を示しつつある。がんなどの慢性疾患を対象にしている。

米エライアス・アニマルヘルス(ELIAS Animal Health):シリーズA、1000万ドル(4月)

・個々の犬に応じたがん免疫療法を開発

・主力製品は犬の骨肉腫が対象

米ガラント・セラピューティクス(Gallant Therapeutics):シリーズA、2550万ドル(8月)

・犬と猫の病気を治療する幹細胞療法を開発

・目やにや口腔粘膜の炎症を引き起こす猫の慢性歯肉口内炎(FCGS)などの治療法を開発中

・従業員数が着実に増え、資金調達実績も堅調なため、CBインサイツのモザイクスコア(健全性を測定)は高水準

米リア・ラボラトリーズ(LEAH Laboratories):助成金97万ドル(23年10月)

・ペット向けに免疫療法の一種であるCAR-T細胞療法(免疫細胞の遺伝子改変によりがんを攻撃する治療法)を開発

・23年10月に米国立科学財団から助成金97万ドルを受給

家畜の健康

デジタル技術の活用は、家畜の健康維持管理にとってより重要になっている。例えば、米メルクアニマルヘルスの最近の投資は、データを活用して家畜の健康と生産を最適化するテックツールに注目していることを示している。

メタン排出削減策

牛や羊などの反すう動物によるメタンの排出を削減する策への注目はさらに高まっている。メタンは地球温暖化に大きな影響を及ぼす上に、動物にとってもエネルギーのロスになるからだ。各社はこの環境問題に対処すると同時に家畜の健康も改善するため、革新的な策を開発している。

米フーフプリント・バイオーム(Hoofprint Biome):転換社債、230万ドル(23年9月)

・牛のメタン排出を防ぎ、栄養状態を改善するため、酵素入りの酵母プロバイオティクス(腸内環境を整える微生物)を開発

米アルケアバイオ(ArkeaBio):シリーズA、2650万ドル(5月)

・反すう動物が消化時に放出するメタンの量を減らすため、ワクチンを開発

・環境に恩恵をもたらし、家畜が飼料から得るエネルギーを成長に回すことができる

AI診断・モニタリング

AI、コンピュータービジョン(画像認識)、高度なセンサーは、病気の早期発見やリアルタイムのモニタリングによる積極的で非侵襲的な家畜の健康策を可能にしている。

仏aiHerd:シード、220万ドル(23年2月)

・センサーを使わず、AIとコンピュータービジョンにより家畜を視覚的にモニタリングできるシステムを提供

・歩行障害、乳房炎、代謝病を検知する機能も追加予定

米EIOダイアグノスティクス(EIO Diagnostics):シード、170万ドル(23年4月)

・高度なセンサーと機械学習を活用した非侵襲型の乳房炎検知システムにより、乳牛の感染初期の兆候を検知

・AIを活用したモニタリングと病気検知システムに関連する特許を取得

米HerdDogg:シリーズA、600万ドル(3月)

・牛の健康状態を遠隔モニタリングする近距離無線通信(ブルートゥース)対応スマートタグと、病気の兆候を早期に検知するAI分析を開発

・5月にはスマートタグを使った治療法で特許を取得

マイクロン・アグリテック(Micron Agritech、アイルランド):シード、290万ドル(23年9月)

・家畜の寄生虫をその場ですぐに検知できるAI診断キットを開発

・機器とモバイルアプリを組み合わせることで、検査機関を介する従来の方法よりも迅速に結果を提供するのが狙い

病気の予防・治療

公衆衛生上の必要性から、家畜の病気を予防、治療する新たなアプローチが増えている。

米ジェンバックス・テクノロジーズ(Genvax Technologies):シード、340万ドル(6月)

・動物の病気を予防・治療するため、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンを開発

・23年4月に米農務省(USDA)から助成金17万ドルを受給

ペプトバイオティクス(Peptobiotics、シンガポール):シリーズA、620万ドル(4月)

・薬が効かない耐性菌が増える従来の抗生物質の代わりとして、組み換えペプチドを開発

・家畜と水産養殖向けの治療法と成長促進に注力

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