AI、複数技術の「掛け合わせ」で進化 サカナAIが新手法

米グーグル出身の研究者らが日本で創業したSakana(サカナ)AI(東京・港)は21日、複数の人工知能(AI)を掛け合わせてより優れたAIを生み出す新たな手法を開発したと発表した。短い時間で「交配」を繰り返してAIの進化を促すことで、開発期間を従来の数百分の1に縮められる可能性がある。
生成AIの開発には通常、高性能の半導体や膨大な学習データが必要となる。高度な基盤技術を開発できるのは資金力のある一握りのテクノロジー企業に限られていた。サカナAIは従来とは異なるアプローチを実現し、生成AIの開発にゲームチェンジを仕掛ける狙いだ。
サカナAIはグーグル出身のデビッド・ハ氏とライオン・ジョーンズ氏、外務省出身でメルカリ執行役員などを務めた伊藤錬氏の3氏が2023年に創業した。ジョーンズ氏は17年にグーグルが発表し、現在の生成AIの土台となった論文の共同執筆者の一人として知られる。
22年に米オープンAIが「Chat(チャット)GPT」を公開して以降、急速に普及する現在の生成AIは「大規模言語モデル」と呼ばれる技術を中核にしている。米テクノロジー企業などが巨大なコンピューターを使い、膨大な文章データを学習させて言語を扱う能力を高めてきた。
サカナAIはこうした従来の開発手法とは一線を画し、魚が群れを形成するように小規模なAIを組み合わせて高度な知能を実現する目標を掲げてきた。今回の発表は具体化に向けた第1弾の成果となる。
開発した手法は一から自前でAIのモデルを構築するのではなく、設計情報が公開された「オープンソース」の技術などを用いる。世界中の開発者らがオープンソースの技術に改良や改変を加え、多様な特徴を持つAIが生まれている。これらの中から異なるモデルを掛け合わせ、生物が進化するように高性能のAIをつくり出す。
まず「親」となる数種類のAIを様々なパターンで組み合わせて「子」となるモデルをつくる。その中から優れた性能をもつAIを選抜し、再び掛け合わせて「孫」のAIを生み出す。実験では1世代で最大100種を超すモデルをつくり、数百世代にわたって掛け合わせを繰り返した。この作業により、無数の組み合わせによる「競争」を勝ち抜いた優れたAIが生まれるという。
サカナAIの手法ではこうした組み合わせや選抜の工程に人間が介在せず、自律的に動作するアルゴリズム(計算手法)を用いる。実験では数百世代にわたる膨大な掛け合わせも1日で済んだ。多くの電力を消費する大量のコンピューターも不要だ。
米テクノロジー企業などが自前の大規模言語モデルを開発する際には、一般に年単位の期間がかかる。条件や方法が異なるため単純比較はできないが、サカナAIの新たな手法ではこれまで大量のデータを学習させて言語能力などを高めていた時間を数十〜数百分の1にできる可能性がある。
同社は開発した手法を用いて実際に①日本語で数学の問題を解く大規模言語モデル②画像に関する質問に日本語で正確に答えるモデル③日本語の指示に基づいて高速に画像を生成するモデルの3種類を試作した。開発した手法は論文として公表し、さらに発展させてより優れたAIの実現につなげる計画だ。
サカナAIは1月に米有力ベンチャーキャピタル(VC)のコースラ・ベンチャーズやラックス・キャピタル主導のもとで約45億円の資金調達を発表した。NTTグループなど日本の大手企業からも出資を受ける。
世界では大手企業が出資や提携を通じて生成AIの有望なスタートアップを囲い込む動きが広がる。サカナAIを巡っても米テクノロジー企業やアジアの有力投資家が出資に意欲を示し、水面下で協議や交渉が進んでいるもようだ。
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