信用取引とは 手持ち資金以上の売買が可能
キソから!投資アカデミー 株式⑲
現物株の取引方法がわかったら、次に知っておきたいのが「信用取引」の活用法です。信用取引を利用すれば投資のチャンスを広げることができます。ただ元手より大きな金額を動かすため、指標をこまめに確認するなどリスク管理が求められます。
信用取引は証券会社に一定以上の担保のお金を預け、証券会社から売買に必要な資金や株券を借りて行う株式売買取引です。担保は「委託保証金」と呼ばれ、その3.3倍の金額まで取引できます。保証金の最低金額は30万円で、保有している株式などを代用有価証券として差し入れることもできます。取引を始めるには証券会社で信用取引口座を開く必要があります。
手持ち資金を上回る取引ができるので、そのぶん損失が膨らむ可能性もありますが、うまく活用すれば効率よく収益機会を得られます。信用取引は「買い」だけでなく「売り」から始めることができ、株価の下落局面で利益を得られるのも利点のひとつです。
「信用買い」は証券会社から資金を借りて株を買い、狙い通り株価が上昇した際は売却して、借りたお金を返す取引です。借りる資金の金利や売買の手数料といったコストがかかりますが、株価がその分を上回って上昇すれば利益になります。逆に値下がりすれば、下落分にコストを加えた額が損失になります。
「信用売り」は株価の下落局面で利益を上げようとする取引方法です。株価が将来に下落すると予想した場合に、証券会社から借りた株を市場で売り(これを「空売り」と言います)、株価が下がった段階でその株を買い戻して証券会社に返却します。株価が下落すれば、空売りした価格と買い戻した価格の差が利益になります。予想に反して株価が上がった場合には、買い戻しで損失が出ます。
証券会社から株を借りるには「貸株料」というコストがかかります。また株価上昇の際に株を買い戻したくても、市場に買い戻す株がなくて反対売買ができず、損を確定できないというリスクがあります。信用取引の売り方が損失覚悟で慌てて買い戻そうとして、株価上昇に拍車がかかることを「踏み上げ」といいます。
日本証券金融(日証金)が発表する「逆日歩」にも注意が必要です。投資家は下がるとみた株を証券会社から借りて空売りしますが、証券会社が常に顧客の需要すべてに応えられる分の株を持っているわけではありません。そんなとき、証券会社は不足した株を日証金から調達します。
日証金でも株が足りない場合、日証金自身も機関投資家などから株を借りてくる必要があります。逆日歩とはこのときにかかる調達コストで、信用売りをする投資家が負担することになります。
担保にした代用有価証券が値下がりしたり、信用取引中の銘柄に含み損が発生したりした場合には、追加で保証金の差し入れが必要になることがあります。これがいわゆる「追い証」です。取引を始めたら、建玉(精算されずに残っている取引のこと)に対し、どのくらい担保があるか測る指標である「委託保証金維持率」を常に確認しておく必要があります。
信用取引の動向が株価形成に与える影響も見逃せません。信用取引は一定期間で反対売買を通じて手じまわれる場合が多く、その動向は値動きを予測するうえで役立つ情報です。
たとえば信用売りが未決済の状態でどれぐらい積み上がったかを示す「信用売り残」は、相場の流れを把握する参考指標のひとつとされます。売り残の増加は株式相場の先行きに弱気な見方が増えていることの表れです。逆に信用買い残の増加は、一般的に株価が今後上昇していくとみている投資家が多いことを意味します。
売り残や買い残の急な増加は、需給の波乱要因となって現物の株価にも影響を与えます。信用取引をしない投資家も注視する必要があります。
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