金の性質 「安全資産」として人気高く
キソから!投資アカデミー 商品⑪
金(ゴールド)と聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。ツタンカーメンの王墓には100キログラムを超える金が使われ、現在も宝飾品や地金(延べ棒)、金貨などで流通しています。投資対象としての特徴や具体的な投資方法など、注意点も交えて解説します。
金には量が少ない(希少性)、見た目が美しい(審美性)、化学的な変化がほとんどない(安定性)という性質があります。国際調査機関のワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、人類がこれまでに掘り出した金の総量は2022年末時点で約21万トン。五輪の公式プール約4杯分しかありません。貴重さと優れた性質ゆえに、古代から高い価値を持ち続けてきました。
コモディティー(商品)のひとつである金は、米国の先物価格や英国の現物価格が国際的な指標です。「トロイオンス」という独特の単位を使い、ドル建てで取引します。1トロイオンスは31.1035グラムに相当します。中世に栄えたフランスの商業都市「トロア」がトロイオンスの語源といわれています。
金には歴史的背景や希少性からいくつかの別称があります。

ひとつが「安全資産」です。金は日々価格が変動するため、購入時より価値が下落する元本割れのリスクはあります。それでも多くの人々が金を安全資産とみなすのは、企業の経営破綻などの影響を受けにくいことが一因です。
例えば08年には、米国の大手証券会社リーマン・ブラザーズが経営破綻したほか、ゼネラル・モーターズ(GM)をはじめとする米自動車大手ビッグ3が経営危機に追い込まれました。企業が経営難に陥ると、信用力に基づいて発行した債券や株式の価格は大幅に下がり、最悪の場合、紙切れ同然になってしまいます。
金は株や債券と違い、それ自体に高い価値があります。発行体の経営難で価値が大幅に目減りするリスクがないため、安全性の高い資産として金を購入する人が増えたのです。
19世紀から20世紀にかけて、金は通貨発行の裏付けに使われたり、国際基軸通貨であるドルとの交換に使われたりしていました。ドルとの交換が停止された現在も、各国の中央銀行が外貨準備の一部として金を保有するなど、通貨としての性質を保っています。特定の国が発行するわけではないので「無国籍通貨」の異名もあります。
ドルは国際基軸通貨であると同時に、いわば「米国籍」の通貨です。世界情勢から米国経済の先行きに不安が募り、ドルの価値が低下するとの思惑が強まれば、金需要の拡大要因になるのです。
新型コロナウイルス禍やウクライナ危機などのように、金は「有事」の際に購入する人が増える傾向があります。有事の際には株や通貨などの価値が大きく変動しやすいため、安全資産で無国籍通貨の金に注目が集まるわけです。