FIREを果たした億万投資家 出遅れPBR株に照準
24年の秋冬相場はこう攻める(3)
「今までの投資生活で一番リスクを取った」。今年8月上旬の大暴落を振り返ってこう打ち明けるのは、投資歴が30年を超えるベテラン投資家のエルさん(ハンドルネーム)だ。5年前に運用資産が1億円を上回り、早期退職を果たした。
現在は運用資産の7割強は米国株のETF(上場投資信託)を中心に投資している。一方で、米国株だけでなく日本株への投資も手掛ける。日本を代表する大企業の株で、時価総額が大きく、流動性も高い銘柄を長期保有するスタイルだ。局面によっては、信用取引で証券会社から資金を借り入れて株を購入する。
「7月上旬までの日本株は買われすぎで、いつか反落すると思っていた。この予想に加えて、家を買うという個人的な都合もあり、米国株に加えて日本株のポジション(持ち高)も減らしていた」と話す。
短期売買を仕掛けて暴落前を回復
8月2日に始まった暴落に対しては「企業の価値とは関係なく売られすぎている」と感じ、いつもとは別の行動を取ったと説明する。それは、売られすぎて大きく値下がりした銘柄を買い、短期で反騰したら売却して利益を上げる作戦だ。まず株価の下落率ランキングを確認して、購入候補の銘柄に目星を付けた。そして手持ちの現金は住宅購入用に残し、信用取引で株の購入資金を手当てした。
株価の下落率ランキングで目星を付けて購入に踏み切ったのは、百貨店大手の三越伊勢丹ホールディングス、ビジネスホテルの「ドーミーイン」やリゾートホテルの運営、学生寮や社員寮の管理を手掛ける共立メンテナンスなどの内需株。さらにトヨタ自動車のように売られ方が激しかった輸出株も仕込んだ。8月2日と同5日の2日間に投じた購入資金は5000万円超。「自分史上で最大の信用取引だった」と明かす。
この2日間に購入した銘柄は、相場が回復したタイミングで速やかに売却した。「暴落前から保有していた銘柄はまだ完全に値を戻していないが、暴落で仕掛けた短期売買の利益によって、運用資産は暴落前の水準を回復した」と語る。
足元ではPBRの低い鉄道株を物色
暴落が起きた後も、日本株の主力銘柄として半導体とインバウンド(訪日外国人)の関連銘柄を保有する。さらに、ここから年末までに値上がりを期待する銘柄として、PBR(株価純資産倍率)の低い銘柄に注目する。東証のPBR改善要請への対応に関する開示で「検討中」「未開示」としている企業が年度末にかけて水準訂正のための対応策を出す。それを材料に値上がりする銘柄があると予想するからだ。
足元では、JR各社などの鉄道株を物色中だ。「PBRが依然として低く、価格も割安な銘柄が多い。不動産やインバウンド需要など、業績の拡大につながる材料もある」と指摘する。
また、就労を目指す障害者向けの就労支援サービスと、発達障害児を中心とした児童への学習面・行動面などの支援を展開するLITALICOにも注目する。同社の経営陣の手腕に期待していると説明する。
(勝間美月)
[日経マネー2024年11月号の記事を再構成]
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