ROE(自己資本利益率) 効率よく稼ぐ力を示す
キソから!投資アカデミー 株式⑬
自己資本利益率(ROE)は株式投資で重要な指標の一つです。「Return On Equity」の頭文字を取った略語で、企業が株主から預かった資本(自己資本)を使ってどれだけ利益を上げているかを示します。純利益を自己資本で割って算出します。高いほど、効率よく資本を使っていることになります。
2014年公表の「伊藤リポート」は企業価値を高める目標水準として「ROE8%以上」を掲げ、ROEを経営目標に掲げる企業が増えました。ROEは売上高純利益率、総資産回転率、財務レバレッジの3要素に分解できます。それぞれを高めることによってROEの改善が可能です。
売上高純利益率は純利益を売上高で割ったもので、収益力の高さを表します。好採算製品の販売を増やしたり、費用を削減したりすると上昇します。
総資産回転率は売上高を総資産で割った値で、効率性を示します。総資産は借入金など外部から調達した負債(他人資本)と自己資本の合計です。一定の資金でいかに多くの売上高を上げるかが問われます。
財務レバレッジは総資産を自己資本で割ったもので、負債の活用度合いを示します。レバレッジはテコの意味です。少ない自己資本ながら、負債をテコにして高い収益を上げることをレバレッジ効果といいます。
単純化した例で考えてみましょう。ある企業が総資産1000億円をすべて株式で調達し、100億円の営業利益を上げたとします。負債がないため支払利息は発生しません。税率を50%とすると最終利益は50億円。自己資本が1000億円なのでROEは5%になります。
では1000億円を株式と借入金(金利4%)で半分ずつ調達して、やはり100億円の営業利益を稼いだ場合はどうでしょうか。20億円の利息を支払うので経常利益は80億円になります。税率を同じく50%とすると、最終利益は40億円。自己資本は500億円ですからROEは8%と先ほどの例を上回ります。レバレッジ効果が出たわけです。
このように、財務レバレッジをかけるとROE向上につながります。ただ総資産に占める負債の比率が高くなりすぎると、利息の負担が増えるなど経営が不安定になる恐れもあるので注意が必要です。
インフレを抑えるための利上げが世界で続き、景気悪化が懸念されています。株式市場でも効率よく利益を稼ぐことができる、収益性の高さが重視される可能性があります。高ROE銘柄も注目が集まりそうです。
ROEに注目して投資をする場合、投資信託を購入する手もあります。運用者が高ROEの有望銘柄を選別するアクティブファンドのほか、海外株ではROEなどを指標とする指数に連動するパッシブファンドもあります。