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シンガポールで初めて培養肉を試食(佐々木明子)

テレビ東京アナウンサー・佐々木明子のニュースな日々

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フードテック最先端のシンガポールへ

先日、日本の「食の未来」をテーマにした報道特番を担当した。最先端技術の取材はいつも驚きがありワクワクする。

「シンガポールでは動物から取り出した細胞を培養して作られた肉が身近になっているんです」。番組プロデューサーの言葉に一瞬たじろいだ。

「日本では研究段階だけど、もう食べられるの?」「すでにスーパーで普通に売られているそうです」

細胞培養肉。以前、他の番組でも取り上げたことがあるが、シャーレの上に載った、薄くて赤みを帯びた生々しい物体はまだ食肉と呼ぶには程遠い印象だった記憶がある。だが、シンガポールではすでに「培養鶏肉」として販売されていて、価格も通常の鶏肉とさほど変わらないという。番組では、日本の食料自給率の低さを食料安全保障上のリスクであると問題提起する。培養肉はその解決手段として期待が高い。食べた人はほとんどおらず貴重な経験になる、と現地での取材が決まった。

テクノロジーを駆使して食の問題を解決することを「フードテック」と呼ぶが、シンガポールは驚くほどその最先端を走っていた。背景にあるのは食料安全保障への危機感だ。シンガポールの面積は東京23区程度で、農地や放牧に使える土地がほぼない。そのため、食料自給率は10%以下と、日本より低い。

2019年には世界で初めて培養肉などの規制の枠組みを導入し、30年までに食料自給率を30%にするという「30by30」という目標数値も掲げた。

最先端技術と政府が支える「未来の食事」 

20年以降の新型コロナウイルス禍ではマレーシアからの輸入が止まり、鶏肉の価格が高騰。名物のチキンライスが食べられなくなったことで危機感はさらに高まったという。折しも牛のゲップが環境に悪影響という意識の高まりも取り組みを加速させることとなった。持続可能な食肉の供給法として政府が本気で動き出し、研究開発拠点が用意された。スタートアップ企業が集まり、培養肉の実用化が進み始めているのが見て取れた。先端テクノロジー誘致を一気に進める様子は、日本にも参考になると感じずにはいられなかった。

その後精肉店を回り、ついに培養肉を見つけた。炒めるといい香りがして、食欲をそそられた。恐る恐る口にすると、食感は鶏肉で香りも変わらず、言われなければ普通の鶏肉だというのが素直な感想だ。ここに未来の食事が見えた気がした。

費用や規制などの壁もまだあるが、もしかしたら近い将来、日本のスーパーで培養鶏肉が肉売場に並ぶようになるかもしれない。

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