中国、巨大金鉱脈発見報道の危うさ
中国の湖南省地質院が同省平江県で金埋蔵量1000トン以上、40本以上の金鉱脈を発見したと国営新華社通信などが報じて、話題になっている。
中国の金鉱山を現地で見学したこともある筆者は、話10分の1程度に受け止めている。
まず、地下2000メートルの深い地層とのことだが、中国の金鉱山は地下数百メートル規模が多く、深層採掘技術のレベルが低い。金のマイニング・エンジニアリングの水準となると、地下3000メートルまで採掘していた南アフリカに専門技術者が偏在する。中国が、その人材をリクルートしたことは考えられるが、筆者は懐疑的だ。
更に、金鉱石1トン当たりの金含有率が最も高いと138グラムに達するという。これは、ほんの一部の鉱脈の話であろう。いまや世界では、金鉱石1トンから純金1グラム抽出できれば御の字だ。
とはいえ、中国は長期国家戦略として米ドル保有を減らし、金を外貨準備として買い増している。更に、腐食せず展性が良いことから、スマホなどには欠かせない部品に使われるので、希少資源として備蓄も行っている。
それゆえ、新規金鉱脈探索に傾注していることは事実だ。これまでは、金鉱山が山東省や内モンゴル自治区に多かったが、今後は可能性のある他地域に広がる可能性が高い。
既に、中国は世界最大の金生産国でもあり、世界最大の金需要国でもある。今後も、国内の金鉱脈開発にはドライブがかかるであろう。
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
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