石炭とは 植物由来の資源、供給量豊富で安価
キソから!投資アカデミー 商品⑦
石炭は日本で古くから使われてきた化石エネルギー資源で、発電燃料や製鉄原料などに利用されています。資源量が豊富で供給安定性が高く、石油や天然ガスに比べて相対的に安価なことから、日本をはじめ各国で基幹エネルギーのひとつに位置づけられてきました。
石炭の起源は植物です。米国や欧州、オーストラリア、中国、ロシアなど世界各地に幅広く分布しています。地政学リスクの高い中東やロシアなどに偏在している石油・天然ガスと比べて地域的な偏りが少ないことから、安定して入手しやすい特徴があります。英BPの統計によると、石炭の確認埋蔵量は2020年末時点で1兆741億トンで、現在の生産量のペースが続いた場合に採掘が続けられる年数(可採年数)も139年と長くなっています。
燃料としてのコストの低さも、石炭が使われ続ける背景にあります。熱量あたりで比較すると、石炭の価格は原油や液化天然ガス(LNG)を平均的に下回ります。
特にウクライナ侵攻後の22年夏に天然ガス価格が急騰した際には、石炭と天然ガスとの価格差が大きく開き、石炭の相対的な割安感が強まりました。このためロシア産ガスからの脱却を進める欧州や、外貨不足でLNGなどを輸入するのが難しくなった新興国などを中心に、22年は石炭の利用を増やす動きが相次ぎました。
国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の石炭消費量は22年に過去最高を更新する見通しです。今後も25年まで22年並みの高い水準で横ばいが続くと分析しています。
石炭は二酸化炭素(CO2)の排出量がLNGの2倍程度と多く、環境負荷が高いという欠点もあります。日本は21年時点で発電電力量の約3割を石炭で賄っていますが、温暖化ガスを50年までに実質ゼロにする目標の達成のため、中長期では再生可能エネルギーや原子力を増やし、石炭火力の割合を減らす計画です。
電力各社はCO2を地下に貯留する「CCS」や、石炭から取り出した水素を燃やす「石炭ガス化複合発電(IGCC)」など石炭火力の次世代化に向けた技術開発も急ピッチで進めています。
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