大学研究「年功序列」打破を 財制審、若手登用促す
財務省は21日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会を開いて科学技術分野の予算について議論した。日本発の質の高い論文の本数が落ちている問題を取り上げた。年功序列ではなく、挑戦的な研究を手掛ける若手に活躍の場を与えるよう提起した。
科学技術関係予算は2021年度で4兆1414億円にのぼる。国内総生産(GDP)比では主要先進国で上位の水準にあると財務省は主張する。一方、研究の生産性は低いとみる。科学技術・学術政策研究所によると被引用数が上位10%の注目論文シェアで、日本は1996~98年の平均で世界第4位だったが、16~18年は第9位に沈んだ。
国の府省共通研究開発管理システムに登録された研究者の論文のデータの分析では、30代前半の研究者が質・量とも高い研究生産性を示した。一方、科学研究費補助金(科研費)などの配分は年齢と比例する傾向にあった。欧州では博士号を取得して間もない若手に研究費を多く配分し、独立して活動できるよう支援している。
会議では「高年齢でも成果を出す人に資金配分されてもよいはずで、成果主義での評価を重視すべきだ」との意見も出た。
日本の大学研究で年功序列を重視しやすい理由として財務省が挙げたのは研究室内部から人材を登用する慣行だ。博士課程の入学者に占める同一大学出身者の割合は平均6割で、理学では8割を超す。内部登用は成果以外の人間関係なども加味されやすい。「年功序列を重んじる教員登用は若手研究者の活力低下につながる」と指摘した。
米国では高い研究成果をあげる研究者は学士号と博士号を取得した大学が異なるケースが5割を超す。財務省はドイツでは同一大学での昇任を認めないとの事例も紹介し、日本でも公募などで外部登用を増やし、縦割り意識を打破すべきだと強調した。
日本は国際共同研究が少ないことも取り上げた。海外では国際共著論文が増えており、研究の閉鎖性を改善するためにも増えていく必要があるとした。