5月基本給2.5%増、31年ぶり伸び率 実質賃金は減少続く
厚生労働省が8日発表した5月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)によると、基本給にあたる所定内給与は前年同月比2.5%増えた。賃上げが進んだことで、伸び率は31年4カ月ぶりの高さだった。実質賃金は過去最長の26カ月連続マイナスだったが、下落幅は縮まりつつある。
5月の基本給は26万3539円だった。伸び率は4月から0.7ポイント上昇し、1993年1月以来の高水準となった。基本給に各種手当などを加えた現金給与総額(名目賃金)は29万7151円で前年同月比1.9%増えた。

春季労使交渉(春闘)では2023年の賃上げ率が3%台、24年は5%台と続き、賃上げの動きが反映されつつある。
パートタイム労働者の時間当たり給与は1328円で前年同月比4.0%増となった。23年6月以降、前年同月比の増加率は常に3%を超えている。厚労省の担当者は「最低賃金の引き上げや、賃上げで人手を確保しようとする企業の動きが影響している」と分析する。

物価変動を考慮した実質賃金は1.4%減だった。物価上昇に給与の伸びが追いつかない状況が続くが、マイナス幅は縮小しつつある。
就業形態別の現金給与総額は、正社員ら一般労働者が2.1%増の37万8803円、パートタイム労働者が3.2%増の10万8511円だった。
業種別で伸び率が最も大きかったのは建設業(7.2%)で、運輸・郵便業(5.7%)が続いた。前月に高い伸び率を示した金融・保険業はマイナス0.9%となった。
総実労働時間は1.2%長い137.1時間だった。一般労働者は1.8%長い161.4時間、パートタイム労働者は0.6%短い80.9時間だった。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
この投稿は現在非表示に設定されています
(更新)
賃上げは賃金水準を一律に引き上げるベースアップと、勤続年数が上がるごとに増える定期昇給からなる。2014年春季労使交渉(春闘)から政府が産業界に対し賃上げを求める「官製春闘」が始まった。産業界では正社員間でも賃金要求に差をつける「脱一律」の動きが広がる。年功序列モデルが崩れ、生産性向上のために成果や役割に応じて賃金に差をつける流れが強まり、一律での賃上げ要求の意義は薄れている。