神田真人財務官主催の懇談会「生産性上げ投資呼び込め」
財務省の神田真人財務官が主催した、国際収支の構造変化を巡る有識者懇談会が2日、報告書をまとめた。貿易・サービス収支の赤字が広がる現状を問題視し、生産性の向上や再生可能エネルギーの供給拡大を通じて、海外から日本に投資を呼び込む必要があると訴えた。
懇談会は大学教授やエコノミストなどが参加した。神田氏は同日、記者団に「国際収支をレンズにして日本経済の課題を洗い出し、処方箋を議論した」と懇談会の狙いを説明し、報告書について「よいものができた」と語った。
国際収支統計は、海外とのモノやサービス、投資などのやりとりを集計したもの。貿易収支は2010年代から赤字が目立つ。22年度には初めて家電やスマートフォンといった電気機器が輸入超過となった。
報告書は「自動車に匹敵する黒字の担い手が不在」だと指摘し「輸出産業の国際競争力の維持・強化が求められる」と強調した。
神田氏はエネルギーの大半を輸入に頼る日本の現状は「資源価格の上げ下げに翻弄されている」と指摘した。再エネ拡大と安全確保を大前提に、原発の再稼働を進めるほか、関連技術の革新に投資する必要性を述べた。
報告書では海外から日本に向かう投資は「国際的に著しく低い水準」にあると強調した。成長性や収益性に乏しく、言語面でも事業環境が整っていないと分析した。加えて日本の家計も少額投資非課税制度(NISA)の影響から海外株などへの投資を増やしている。
日本にお金が集まらない実情を踏まえ、国内への投資誘導には、労働移動の円滑化やリスキリング、研究開発の強化などを通じて「投資から得られる期待収益率を引き上げることが正攻法」だと記した。
所得収支の黒字が大きく増えたことで、23年度の経常黒字は過去最大に達した。報告書はこの黒字について「盤石なように見えるが、決して楽観できる内容ではない」と主張した。
中長期的には経常収支の黒字額が縮小し、赤字に転じるとの試算もある。神田氏は「急いでやれば勝算はある」と述べ、対策をとれば持続可能な収支構造に転換できるとの見方を示した。