米大統領、ヒズボラ指導者殺害「正当」 イスラエルを擁護
【ワシントン=坂口幸裕】バイデン米大統領は28日、イスラエル軍がレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの指導者ナスララ師を殺害したのを受けて声明を発表した。「何千人もの米国人、イスラエル人、レバノン人の民間人を含む多くが彼の犠牲になっており、正当な措置だ」と記した。
ヒズボラについて「40年にわたる恐怖政治の間に数百人の米国人を殺害した責任がある」と指摘。ヒズボラのほか、イスラム組織ハマスやイエメンの武装組織フーシなど親イラン勢力から自衛するイスラエルの権利を米国は全面的に支持すると強調した。
緊迫する中東情勢をめぐり「外交手段を通じ、パレスチナ自治区ガザとレバノンの紛争の沈静化をめざす」と訴えた。イスラエルやハマスなどとの停戦協議について「合意を締結し、イスラエルへの脅威を取り除き、中東全体に安定をもたらす時が来ている」と唱えた。東部デラウェア州では記者団に「停戦の時だ」と強調した。
バイデン氏は28日、ハリス副大統領や安全保障担当者との電話会議で中東情勢について報告を受けた。ホワイトハウスによると、米軍の戦力態勢の現状を確認し、同盟・有志国と協力して地域の緊張緩和に向けた外交努力を継続するよう指示した。
オースティン米国防長官も28日、イスラエルのガラント国防相とレバノン情勢を巡って電話で協議した。米国防総省によると、イランや親イラン勢力が紛争を拡大させないよう抑止に全力を尽くしていると伝えた。地域の米軍を守る態勢を維持しているとも訴えた。
米国や日本、欧州連合(EU)などは25日、イスラエルとヒズボラに21日間の即時停戦を求める共同声明を発表していた。イスラエル軍がナスララ師を殺害したことで、ヒズボラと全面衝突する懸念は一段と高まっている。
中東の安定は2025年1月で1期4年の任期を終えるバイデン氏にとって「外交政策上の最重要目標」(米CNNテレビ)となっているものの、強硬姿勢を変えないイスラエルを制御できないでいる。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のグランディ難民高等弁務官は28日、X(旧ツイッター)で激化するイスラエル軍によるレバノン攻撃で、5万人が隣国シリアに避難したと投稿した。
避難民の中にはレバノンに住むシリア人も含まれる。長期化するシリアの内戦でレバノンに逃れた避難民が帰国を余儀なくされた可能性もある。グランディ氏はレバノン国内の避難民は20万人以上になるとも表明した。
米国務省は28日、イスラエルとヒズボラの対立で緊迫するレバノンの首都ベイルートにある米国大使館の一部職員と家族の国外退避を命じた。同国に滞在する米国民には民間航空機が利用できる間に「レバノンを離れるよう強く勧める」と呼びかけた。
イスラエル軍は2024年10月1日、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラに対し、イスラエルと国境を接するレバノン南部で「限定的」な地上攻撃を始めたと発表しました。その後、イスラエル軍は、イランがイスラエルに向けて同日にミサイルを発射したと発表しました。最新ニュースと解説記事をまとめました。