中国「戦闘準備へ警戒」と反発 米議員団が軍用機で訪台
【ワシントン=中村亮、北京=羽田野主】米議会の代表団が9日、台湾を訪問した。米要人の訪問は少なくとも今年3回目で、定期的な接触からは米台交流を既成事実化する思惑が透ける。中国は台湾海峡で警戒パトロールの実施を発表しており、米中の台湾をめぐる駆け引きがいっそう激しくなる。
米国防総省のカービー報道官は9日、記者団に対して議員団の移動を軍用機で支援したと認めた。「米議員団の台湾訪問はよくあることだ」と語り、訪問に特筆すべきことはないと主張した。中国国防省は移動に軍用機を使ったことに強く反発したが、カービー氏は「珍しくない」と真っ向から反論した。訪台した議員や日程は明らかになっていない。
今回の訪台は中国共産党の重要会議、第19期中央委員会第6回全体会議(6中全会)の開催中に実現した。中国が国内外の情勢に神経質になりやすい重要会議の開催期間に配慮せず訪台したのは、米台交流を日常的な出来事と位置づける狙いがあるとみられる。
米要人の訪台は定例化しつつある。バイデン米大統領は4月、リチャード・アーミテージ元国務副長官やクリス・ドッド元上院議員など3人を台湾に派遣した。タミー・ダックワース氏ら超党派の上院議員3人も6月に台湾を訪れた。両訪問団はそれぞれ蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と会談し、米国の台湾問題への関与を訴えた。
米台は他の分野でも交流を公に進めて関係強化をアピールし、台湾に軍事・外交面で圧力を強める中国をけん制するようになった。
蔡総統は10月下旬、米CNNテレビのインタビューで、米軍が台湾軍の訓練を目的に台湾に駐留していると初めて認めた。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、米当局者も匿名で訓練の事実を認めた。米軍元高官は「匿名でも現役の当局者は確認を避けてきた」と説明し、米政府の対応の変化を指摘する。
バイデン政権はトランプ前政権に続き、台湾の国際機関への参加も強く訴えている。ブリンケン国務長官は10月下旬の声明で国際民間航空機関(ICAO)や世界保健機関(WHO)の例をあげて台湾の参加を支持するよう各国に呼びかけた。米台の実務者協議もオンライン形式で開き、台湾の参加に向けた方策を議論した。
中国共産党の習近平(シー・ジンピン)指導部は反発を強めている。中国外務省の汪文斌副報道局長は10日の記者会見で「米国はいかなる形でも公の立場にある人間の往来を直ちにやめ、台湾独立を企てる分裂勢力に誤った信号を送らないように要求する」と話した。
台湾方面を担当する人民解放軍東部戦区の報道官は9日、台湾海峡周辺で「戦闘準備のための警戒パトロール」を実施したと発表した。「多兵種の連合作戦能力の向上をさらに検証する」と強調し、今後も陸海空など兵種を超えた訓練で台湾に軍事圧力を加える可能性を示唆した。
台湾国防部(国防省)によると、中国軍の戦闘機「殲16」や対潜哨戒機「運8」など計6機が9日に台湾の防空識別圏に侵入した。
複数の米メディアによると、米中首脳のオンライン協議が来週にも開かれるという。台湾問題が主要テーマにのぼる公算が大きいが議論は平行線をたどるとみられる。
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