石破円安かトランプドル高か 150円台で瀬踏み
ニューヨーク(NY)勢と「今年のビッグサプライズは?」との議論になったとき、「利下げ開始後も10年債が4%超えの高金利水準なこと」を挙げる参加者が目立った。21日に10年債利回りが1日で0.11%高と急騰。4.19%まで上昇した。11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ見送り説にこだわる人もいれば、トランプ前大統領が激戦州で有利との報道を受け、財政赤字リスクを重視する人もいる。基本的に、NY債券市場もいよいよ大統領選挙が間近に迫り、投機筋の短期売買の荒波が席巻している。その結果、NY外為市場では、投機的ドル買いが優勢だ。
一方、週明けに東京発で「与党苦戦」の報道がNYでも流れたことで、「石破発言サプライズ」が蒸し返され、慎重な日銀利上げペース観測を口実に円売りに走る動きも顕在化した。今更のように、日本政府と日本銀行の「アコード」(政策協定)の意味合いが、米国とは異なり、財政規律の緩みの象徴的現象と指摘されたりする。結局、投機筋は、まず売りか買いかのポジションありきで、それに合う議論を引っ張り出してくる。
ドル円相場の動きは、先週末から21日にかけて、149円20銭台から150円80銭台まで一気に円安が進行した。更に、その後151円突破の局面もあった。米大統領選挙と11月のFOMCの直前に、日本側通貨当局がNY市場まで出張っての為替介入は「マナー違反」との認識もある。
日米とも政治的・経済的に正念場にある緊張した市場環境のなかで「偶発的」に生じた150円超えだが、市場内が拮抗しているときの潮目の変化は、想定より長引く傾向がある。
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、相変わらず「データ次第」「meeting by meeting(会合ごとに決める)」との姿勢を崩さないが、その経済データが振れると「ノイズ=雑音」と切り捨て、金融政策には「long and variable lag(長く、多様化したラグ)」があると煙に巻く作戦も、そろそろ限界ではないか。パウエル氏発言の行間を読む市場も、合言葉を昨年から今年にかけて「FEDには逆らうな」から「FEDを疑え」にシフトしたかと思えば、直近では「FEDには逆らうな」に戻った。まさに翻弄されているとのいら立ちも目立ち始めている。
「この程度は嵐の前の静けさ。年内にもう一回、大きな揺れがくる」と語る百戦錬磨のヘッジファンド関係者の「アニマル・スピリッツ=獣性感覚」が不気味に響いた。

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