米財務長官候補にアベノミクス賛美者も
米トランプ次期政権下での最後に残る重要ポストとして財務長官人事がウォール街でも話題になっている。
欧米メディアの取材合戦もヒートアップしており、英フィナンシャル・タイムズ(FT)は、未公開株投資で財を成したローワン氏が、最有力候補で、トランプ氏と面接予定と大々的に報じた。
元米連邦準備理事会(FRB)理事のウォーシュ氏などを含め、候補者として様々な名前が挙がるので、「雨夜の品定め」のごとく、話題の候補者が入れ代わり立ち代わりイベントなどに呼ばれては取材攻撃を受け、持論を展開している。
そのなかで、日本人の興味を引くのはベッセント氏。当初、最有力視され、その後、やや伸び悩んでいるが、国家経済会議(NEC)委員長という要職への就任が有力とされる。このポストもマクロ米国経済司令塔の一角として、ウォール街では、垂涎(すいぜん)のポストだ。
そのベッセント氏が、ニューヨーク(NY)のシンクタンクが主催したイベントに登壇。自らが、日本の故安倍晋三首相に敬服(admire)しており、「米大統領が成功するための3本の矢」を提唱。「3本の矢」をトランプ政権の経済政策テーマとしてアドバイスすることも考慮していると語った。同氏は「3-3-3」と銘打ち、具体的政策案を説明している。まず、実質経済成長率3%の実現。規制緩和や民間投資促進を「フォワードガイダンス」として掲げるという。次に、財政赤字を国内総生産(GDP)の3%に抑えることを大統領が公約する。そして、米国エネルギー生産量を日量300万バレル増産する。
これらの条件が満たされれば、FRBも、適度な利下げを実現できるとしている。
なお、ベッセント氏は、キー・スクエア・キャピタル・マネジメントというヘッジファンドの創設者兼最高経営責任者(CEO)。ウォール街で働き始めた頃は、ジム・ロジャーズ氏と同期のインターンであった。その後、ジョージ・ソロス氏率いるヘッジファンドの最高投資責任者(CIO)に就任。ポンドや円に対する売り攻撃を仕掛けたこともある。
現役ヘッジファンドのトップが、いきなり経済閣僚になるという話も、日本人から見ると信じがたいが、これもトランプ流。市場は、まずは、お手並み拝見という姿勢である。
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・X(旧ツイッター)@jefftoshima
・YouTube豊島逸夫チャンネル
・業務窓口は[email protected]