中東情勢と米港湾ストが共振、11月利下げ見送りも
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長にとっては、なんとも悩ましい成り行きになった。
サプライサイドのインフレ再燃を想起させるような突発的出来事が立て続けに生じたからだ。
まず、イランのイスラエルに対するミサイル攻撃については、ホルムズ海峡経由の原油輸送に大きな支障が出るほどにエスカレートするか否かが重要なポイントになろう。
次に、全米14港湾が、ストライキ状態に突入したことは、物流への影響が懸念され、新たなインフレ再燃の可能性が危惧される。すでに、様々な米金融機関が、今後の推定シナリオを発表しているが、クリスマス商戦を控えるタイミングゆえ、11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けて、さらに悪化の可能性を秘める。
既に9月のFOMCでは、会合参加者の24年末までの利下げ予測が、かなり割れたことが判明。今週には、パウエル氏が、「利下げは急がず」とのメッセージを発信した。最近のパウエル語録の特徴は、引き締めから緩和へのpivot(転換)との表現を控え、recalibrate(再調整)という単語を連発していること。9月FOMC後の記者会見では、同語を9回繰り返したことが話題になったほどだ。金融政策を柔軟に微調整するための布石と解釈されている。
まさに、地政学的リスクの悪化や、供給網の思わぬ支障の可能性を考慮して、「(利下げは)会合ごとに(meeting by meeting)決める」ことになろう。
11月のFOMCまでに解決のめどがつかなければ、利下げは見送りの可能性もある。
中東情勢も港湾ストも、FRBの管轄外の出来事だが、その結果として、インフレ再燃ともなれば、FRBが連座責任を問われかねない。
市場の11月利下げ予測も、0.25%か0.5%かの二択ではなく、三者択一になるシナリオが出てきた。
なお、9月のFOMCでは、ボウマンFRB理事が、0.5%利下げに反対票を投じ、0.25%幅に留めるべきとした。FRB理事による反対意見は19年ぶりの事と注目された経緯もある。反対の理由として、同氏は「インフレとの戦いの早すぎる勝利宣言と解釈される可能性がある。利下げペースを遅らせることで、不必要な需要を煽ることを回避できる」と述べた。

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