辻原登「陥穽」(325)
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陸奥の釈放の知らせに安堵した伊藤は、翌明治十六年三月初旬、イギリスの憲政学習のためロンドンへ向かう。ロンドンでの勉学中、ドイツとは対極的ともいえるイギリスの憲政こそ、将来の日本の政治がめざすべき手本だと考えるようになった。この路線の研鑽を陸奥に引き継いで貰おう。
賜暇休暇で帰国中のE・サトウが伊藤の宿舎を訪れ、久し振りの邂逅を喜ぶと共に、旧友陸奥の出獄を祝って盃を上げた。
「四月三十日、伊藤を訪...
朝刊連載小説・辻原登「陥穽 陸奥宗光の青春」(小杉小二郎 画)のバックナンバーをお読みいただけます。