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定額減税、自分はいつ・いくら? 注意点を確認

知っ得・お金のトリセツ(144)

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6月から定額減税が始まった。基本的には「差し引かれる税金が4万円減り、その分手取りが増える」仕組みだが、個々人への影響は働き方や扶養する家族の状況で千差万別。うっかりしていると「え? いつ4万円もらった?」という感覚に陥る人もいそうだ。自分はいつ、いくら懐のぬくもりを実感するのか? 複雑怪奇な制度を理解して、思わぬ落とし穴にはまらぬよう注意しよう。

Q. 定額減税はいくら? 

定額減税は1人あたり所得税3万円、住民税1万円の合計4万円。会社員や公務員の場合、6月以降に支払われる給与、賞与から天引き(源泉徴収)される税金がその分減る。扶養家族分も足され配偶者と子2人の4人家族なら計16万円、子ども10人の大家族なら計48万円の減税額になる計算だ。

Q. 対象外の人もいる? 

対象は国内居住者のみ。所得制限があり年収2000万円超の人の世帯は対象外だ。ただ、2000万円超の人も6月に一度、税金を減らした上で来年の確定申告で「増税」する手順になるのでややこしい。そもそも源泉徴収とは、その年の稼ぎがいくらで着地するか年末ギリギリまで分からないにもかかわらず、毎月一定のテーブルに基づきザックリ取って先に納税する仕組み。そこに定額減税が加わり一段と複雑になった。

Q. 納税額<減税額なら?

あくまで「減税」にこだわった経済対策なので、減らせるだけの税金を納めていなければ意味がない。つまり軽減される所得税の上限は自分の月々の納税額だ。低所得だったり扶養家族が多かったりすると、もともと税優遇されており納税額は少ない。仮に所得税額が月3000円なら3万円÷3000円で減税効果がフルに出るのに10カ月かかる計算。それでは長すぎるので今年中に引ききれない差額は給付金として現金で渡す。

Q. 住民税は?

住民税は別の仕組みで減税する。通常2024年度分については今年6月〜来年5月に12等分して支払うところ、今年6月は一律ゼロとして徴収しない。7月以降に減税分を差し引いた上で11等分して納税する。結果的に1カ月当たりの支払額でみると増える場合もある。所得税と住民税で対象となる稼ぎが違う点も複雑な要因だ。所得税は今年の未確定の年収が対象だが6月からの住民税は去年の年収を基に算出した額だ。

Q. 自分は給付金あり?

課税所得が高い順に①減税だけ②減税+給付金③給付金だけ――の3パターンに分かれる。③の住民税非課税世帯などには給付済みの3万円に加え7万円を配る。住民税の均等割だけ納める世帯や、今年度新たに非課税になったり均等割だけ納めるようになったりした世帯には10万円を給付する。自分がどのパターンか、内閣官房のサイトにフローチャート(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/benefit2023/hantei/FC1.pdf)がある。見ても今ひとつ分かりにくいが大丈夫。給付金がある人には住民税を納める市区町村から連絡がくることになっている。スルーしないよう要注意だ。

Q. 自分は減税+給付金?

②の減税+給付金はおよそ3200万人と見込まれる。配偶者と小学生2人を扶養する4人家族の場合、年収およそ170万〜535万円の層が該当する。薄く長く減税が続いた後、引ききれなかった分を年末調整で計算し給付金額を算出するのが一連の考え方。会社が窓口となる減税と自治体が担当の給付金にまたがりミスも起きやすくなる。給与明細や住民税の税額決定通知書、源泉徴収票を片手によく確認しよう。収入は多くても住宅ローンや医療費の控除などを多く使っている場合、このカテゴリーになるケースもある。

Q. 給付金はいつもらえる?

減税+給付金の人に対する「調整給付」は早めにもらえる「当初給付」と最後に計算し直す「不足額給付」の二段構え。去年の課税状況を基に税金が少なく引ききれないと推測できる場合、6月時点で当初給付を決定する。実際に現金が手元に届くタイミングは自治体ごとに異なる。一方、不足額給付が手元に届くのは今年の所得税額が確定し、来年の確定申告も終わった来春以降になりそうだ。

Q. 給付金はお得なの?

税金額は端数が出るのが普通だが、調整給付金は全て「1万円単位」での支給になる。足りない額が1000円だとしても1万円もらえるわけで9000円の得になる。また働き方や家族の状況が変わり、結果的に給付金を多くもらった場合も返還は不要。物価高対策という趣旨と自治体の作業量軽減のための措置だ。

Q. 給付金をもらう手続きは?

給付金をもらうには基本的に「もらいます」の意思表示をする必要がある。対象者には住民税を納める市区町村から確認書が届く。記載内容を確認のうえ、必要事項を記入し、本人確認書類等と一緒に返信するケースが一般的だ。QRコードを読み取ってオンラインで回答するなどデジタル活用を進める自治体もある。申請締め切りも自治体ごとに設定される。自治体のホームページで確認しよう。国と自治体の手続きを考えると、個人は遅くとも10月末よりも前に申請する必要がある。

Q. 年金生活者は?

年金は支給日に所得税の定額減税を反映させて振り込まれる。支給日は偶数月の15日が基本だが6月は15日が土曜なので14日(金)になる。引ききれない額が繰り越されて足りなければ給付金となる仕組みは会社員と同じ。住民税減税は10月から始まる。働きながら年金をもらっている人は年金と給与両方から減税され、来年の確定申告で「減税され過ぎ」を解消する。ただ、一定の要件を満たした年金受給者は確定申告をしなくてよいという制度もある。結果的に二重に減税されることもあるわけだ。

Q. 自営業、個人事業主は?

個人事業主は一定額以上を納税する「予定納税」がある人とない人で減税時期が異なる。ある人は7月から所得税の減税が始まるが、ない人の減税は来年の確定申告を経た後になる。だいぶ先だ。住民税については6月の第1期分から減税され、減った後の額が記載された納付書が届く。

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年からマネー・エディター、23年から編集委員兼マネー・エディター、24年から編集委員兼論説委員。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

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