横浜を技術系スタートアップの聖地に 湾岸部に新拠点
横浜市が技術系スタートアップの支援体制を強化している。グリーントランスフォーメーション(GX)やモビリティーの関連企業創出をめざし、今秋にも湾岸部のみなとみらい21(MM21)地区に成長支援拠点を設ける。大企業の研究開発拠点が集まる強みを生かし、エコシステム(生態系)を形成し新たな街の顔に育てる。
「半導体から宇宙まで、モノ作りの技術を生かして技術系スタートアップの街にしていく」。プロジェクトを進める佐藤広毅副市長はそう力を込める。
11月に開設予定の新拠点はMM21地区の顔ともいえる横浜ランドマークタワーや横浜美術館に囲まれた一等地だ。輸入車のショールームがあった場所で、大通りに面した場所でイベントや製品展示をして街を歩く一般の人にも技術系スタートアップのにぎわいを印象づける狙いだ。
運営は三菱地所と産学公民のイノベーション創出の連携基盤「横浜未来機構」の共同企業体が担う。三菱地所はこれまでも関内地区の支援拠点、YOXO BOX(よくぞボックス)や横浜ランドマークタワー内の横浜市立大学との産学連携拠点「NANA Lv.(ナナレベル)」などを通じてスタートアップ支援に携わってきた。横浜未来機構は160近い団体が加盟しており、大企業や大学との連携を強みとしている。
施設では事務所やカフェのほか、試作品の展示や体験ができる場所や外部との交流空間を広くとる計画だ。大企業やベンチャーキャピタル(VC)への事業説明のピッチや、マッチング、解決したい課題をスタートアップに投げかけるリバースピッチなどの交流促進イベントを開く。
海外支援機関との連携もほかにはない強みだ。世界最大級のイノベーション創出機構であるケンブリッジ・イノベーション・センター(CIC)の姉妹団体であるベンチャー・カフェ東京(東京・港)は人材の交流プログラムを新拠点で始める計画だ。「テック&グローバルをテーマにアジアをリードするエコシステムを形成する」(ベンチャー・カフェ東京)としている。
すでに2023年12月にモビリティー分野に特化したイノベーション支援機関のドイツのThe Driveryと基本合意書を結び、モビリティー関連の支援体制を固めている。
スタートアップ誘致、支援に関しては大阪や名古屋、福岡などが力を入れており、都市間競争も激化している。横浜は東京から近く人が集まりやすい利点がある一方で、小規模なビジネスが多く、VCなど投資家の関心の低さが課題だった。
横浜の強みである大企業や大学の研究機関との連携を進め「技術系スタートアップの聖地」に向け、どれだけ外部人材・組織を巻き込んでいけるか。官民一体となった「チーム横浜」の本気度が試されている。(松原礼奈)
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