トップ研究者の支援事業「特許出願少ない」 総合科学技術会議
政府の総合科学技術会議が最先端研究開発支援プログラム(FIRST)に対する中間評価をまとめた。同プログラムでは山中伸弥京大教授ら日本を代表する研究者30人に1000億円の研究費を集中的に投じるが、過半の17件の課題について特許出願が少ないと指摘した。科学技術を経済再生の柱に据える安倍政権の下、知財への取り組み強化が求められそうだ。
最先端プログラムは09年、当時の麻生政権が同年度補正予算で2700億円を盛り込んでスタート。同年夏の政権交代で民主党政権が成立し、1000億円に減らした経緯がある。それでも研究者一人あたり30億円強と従来の助成規模を大幅に上回り話題になった。
研究期間は13年度までの5年。臨場感あふれるテレビ会議システムの開発など実用化に近い分野から、宇宙空間を埋め尽くす暗黒物質(ダークマター)の観測など純粋な学究分野まで幅広い研究分野から助成先を選んだ。
総合科技会議は30件の研究課題のほとんどを「順調に進展中」と評価したが、17件の課題について知財出願件数が少ないと指摘した。
ただ、研究テーマのなかには実用性とは無縁のものも多く、特許出願につながらないものもある。日本の科学技術力を経済成長の起爆剤にするには、単に著名研究者に巨額の予算を付けるだけでなく、実用化などのアウトプットを強く意識した研究戦略を求められそうだ。
1996年に始まった第1期科学技術基本計画以降、政府の科学技術関係費が国内総生産(GDP)に占める割合は、当初の0.7%から0.9%まで引き上げられてきた。一方で半導体や家電で海外勢に市場シェアを奪われるなど、日本の製造業は苦戦している。