JR東海、リニアに早期集中投資へ 東海道新幹線の改修費圧縮
東海旅客鉄道(JR東海)が東海道新幹線の大規模改修の前倒し実施と工費圧縮にめどをつけたことは、2027年に開業予定のリニア中央新幹線計画にも追い風となる。工費圧縮の切り札となった自社開発の新工法により営業運転への影響は最小限に抑えられ、工期中の運輸収入の安定確保にもつながる。経営資源を早期にリニア建設につぎ込む態勢が整い、リニア開業の前倒しも現実味を帯びてくる。
JR東海は02年にこれまでの改修計画を策定したあと、効率化のため新工法の開発を本格化。愛知県小牧市に開設した研究施設で経年劣化対策の研究を進めていた。12年度には鉄橋、コンクリート高架橋、トンネルの各4カ所で新工法を試し、実用化が可能と判断した。
従来は鉄橋の架け替えなど大規模な工事を予定していたが、新工法により既存設備の長寿化を施す形に転換した。同社の技術開発部の担当者は「経済的で運行に支障もなく、取り換えと同等の効果がある。10年単位の長期間の維持ができる」と説明する。
東海道新幹線の維持はJR東海の最重要課題。リニア新幹線計画も新幹線の代替路線を確保する目的で始まった。東日本大震災などをきっかけにインフラの維持改修の重要性が浮き彫りとなり、JR東海に改修の前倒しを決断させた。
改修計画の効率化は、総額9兆300億円にのぼるリニア計画の費用確保にも寄与しそうだ。新工法の採用で改修費用を約3600億円圧縮し、工期中の運輸収入の目減りも回避できる。改修工事の前倒しに伴い引当金の積立計画も3月で終了し、14年3月期は営業費用が683億円減少すると見込む。
ただ改修計画の変更がリニアに与える影響について同社は「開業時期は景気や支払利息など様々な要素を考え試算している。現時点で見直す予定はない」(経営管理部)と慎重な見方を示す。
JR東海の山田佳臣社長はこれまで「リニア中央新幹線までにできる限りの安全投資を前倒しで進める」と繰り返し発言してきた。リニア建設と並ぶ大きな経営課題だった東海道新幹線の改修の前倒しが、どのような形でリニア計画の追い風となるかが注目される。(小川知世)
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