米アップル、9年ぶりに米国で本格生産 中国コスト高など背景
【シリコンバレー=岡田信行】米アップルが2013年からパソコン「マック」の一部機種を米国で生産することが6日明らかになった。製品組み立ての大半を中国の協力工場で手掛けるアップルが米国で製品を本格的に生産するのは2004年以来、約9年ぶり。中国での人件費高騰といった「チャイナリスク」や、米国内での空洞化批判などが背景にあるとみられる。
アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)が、米経済誌ブルームバーグ・ビジネスウイークと米NBCテレビの取材に応じ、その内容が6日報じられた。それによると、アップルは「長期にわたって(米国生産を)検討しており、13年に始める」としている。
米国で生産するのは「マック」の一部機種にとどまる見込み。アップルは1億ドル(約82億円)以上の投資を実施する。「自社生産ではなく、他社と協力する」としており、アップル製品の製造を受託してきた台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が米国内に生産拠点を構えたうえで供給するとの見方が強い。
アップルはこれまで中国での生産でコストを削減してきただけでなく、ホンハイの大規模工場を活用して数百万台単位の製品を一気に生産。発売後数日で売り切って機会損失を防ぐ戦略で成功してきた。
しかし、人件費上昇で中国生産のコスト面でのメリットが失われたうえ、ホンハイ傘下の協力工場の労働環境が国内外の批判を浴びるなどリスクも顕在化してきた。
さらに米国内でも海外生産が製造業の空洞化を招いたとの批判が強まっており、雇用創出への協力を求められていた。クックCEOは今年5月、「条件さえ整えば(米国での製造再開は)あり得る」と発言していた。