被災者への接し方 専門家に聞く「気配り」のコツ
心理的経過に4段階、感情の変化に理解を
東日本大震災では被災者の県外への避難や集団での移住の動きも出始め、新たに住まいとなった場所でボランティアらが被災者と接する機会が増えている。今後、支援のために被災地に入る人も、かなりの数に上るだろう。心身ともに多大なストレスを抱えた被災者と接する時に、どんな点に気を配ればよいのか。専門家の話をまとめた。
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東京都立中部総合精神保健福祉センターは冊子「災害時の『こころのケア』の手引き」を発行している。保健所や市区町村などの職員を対象にしているが、一般の人にも参考になる内容だ。
それによると、被災者の心理的経過は4つの時期に分けられる。災害直後の「茫然(ぼうぜん)自失期」から、被災者同士が強い連帯感で結ばれる「ハネムーン期」、直後の混乱が収まりはじめ、被災者の不満が噴出する「幻滅期」を経て、復旧が進み、生活のめどが立ち始めるころの「再建期」に至る。
今は日本全体が、被災者のために何ができるかを考え、愛他精神が広がっている。その一方で、被災者はかなり大きなストレスを抱え込んでいる。
同センターの井上悟・保健福祉部長は被災者のためにボランティアや一般の人ができることとして、「気がめいって何をする気も起きない人に、日常の困り事を手伝うような気持ちで接するのがいいのではないか」と話す。
当座の生活で不自由を感じていることを聞き出し、その解決に向けて手伝うだけで、被災者のストレスは軽減される。被災者の話をじっくり聞くのもよい。
ただし、被災体験を無理に聞き出すことは避けた方がいい。精神科医で東京都精神医学総合研究所の飛鳥井望・所長代行は「はき出すことですっきりする人もいるが、生々しくてとてもはき出せない状態の人もいる」という。冨永良喜・兵庫教育大教授(臨床心理学)も、「話し出したら止められなくなる場合もある。話すことが心の回復につながると思い込まないでほしい」と話す。

被災者自らが話し出す場合は、無理に遮らずに聞いた方が負担は軽減される。
ボランティアら周囲の人には、被災者を励ましたい気持ちが起きるだろうが、かけるべきではない言葉もある。例えば、「早く忘れた方がいい」と言ってしまうと、忘れられない体験をした人にはかえって苦痛。また、「頑張って」など、直接的な激励の言葉は、力を出し尽くして疲れ切っている人には負担となる。
不自由な避難所生活が長引き、被災者がささいなことから怒りを爆発させる場合もあるだろう。「まず、いら立ちが高じるのは当然の反応だと理解してほしい」と飛鳥井医師。
感情を爆発させるのは何かしら困っていることがあるからだ。
飛鳥井医師は、「爆発の裏に何があるのかをよく聞いて」と勧める。複数の困り事が積み重なっていたり、すぐには解決できなかったりする場合があるが、「被災者の抱えているものを順序立ててると、相手の気持ちの整理につながる」と話している。