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増えるか「男の産休」 法改正で国も後押し

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女性に比べて取得が少ない男性の育児休業。だが若い世代では、取得に前向きな考え方が広がりをみせる。国も妻の出産直後に夫が育児休業を取る「男の産休」に注目し、法律の改正で後押しする。育児や家事に積極的に参加する男性や、里帰り出産をせずに夫婦で乗り切った男性たちを追った。

「育児休業中の生活があんなに忙しいとは正直、思っていなかった」。こう話すのは住友生命保険の三島支部(静岡県三島市)に勤務する山口潤さん(30)。2009年6月に三男が生まれてすぐ、3週間の育児休業を取った。共働きで双子の男子(2)がいる。出産直後の妻の負担を考え「落ち着くまで自分が仕事を休むのが一番だと考えた」。

毎日へとへとに

休みの間は毎朝6時に起き、食事の準備から掃除、洗濯と続き、その間に双子を保育園にあわただしく送り迎え。夜は夜泣きで1時間おきに起こされ、へとへとに。「DVDを借りて見ようと計画していたが、それどころではなかった」と苦笑する。

あらためて育児や家事の大変さを知ったという山口さん。育児休業から復帰した今は、なるべく早く帰宅し、子どもと過ごす時間をつくろうと考えている。

厚生労働省によると、育児休業の取得率(08年度)は女性が90.6%だったのに対し、男性は1.23%ときわめて低い。「職場に迷惑がかかる」「給料が減る」などの理由でためらう人が多い。

国はこうした状況を改善しようと、6月に改正育児・介護休業法を施行する。なかでも注目されるのが、妻の出産後8週間以内に夫が取得した場合、職場復帰後に特別な理由がなくても2回目が取れる制度だ。

 改正前は短期間でも育児休業は1回のみ。そのため出産後の大変な時期に「『今後、もっと必要なときがあるかも』とちゅうちょする男性が多かった」(厚労省)という。「出産後は女性が体力的につらいときで育児も手がかかる。夫もこの時期になるべく取ってほしい」と期待を寄せる。

一緒に過ごすことで、親子や夫婦間のきずなが強まるとの指摘もある。

「里帰りせずに自分たちでがんばろうと思った」。ベネッセコーポレーション教育事業本部の白幡哲也さん(34)は09年10月から1カ月、3人目の子となる次女の誕生に合わせて育児休業を取った。長男や長女のときは、妻は出産前から実家に里帰り。出産後もしばらく実家で過ごし、白幡さんは子どもの顔を毎日見られなかった。

3人目が生まれたときは「自分が休みを取って2人で乗り切ろうと決めた」。職場では通信教育の編集長をしている白幡さん。1日の仕事を時間ごとに書き出し、引き継いでもらう仕事を後任者に頼んだ。育児休業中は子どもの世話や家事に追われる毎日だったが「生まれてからずっと一緒にいるので、毎日の成長ぶりがよくわかる」。

価値観を伝える

とはいえ、男性の育児休業は、制度があっても使いこなすのは簡単ではない。父親の育児支援を手掛ける特定非営利活動法人(NPO法人)ファザーリング・ジャパン(東京都文京区)の安藤哲也代表理事は「取得できる権利はあっても、仕事ぶりなどで周りを納得させないと難しいのが現実」と話す。カギとなるのは「自分の子育てに対する価値観を職場に伝えられるかどうか」だ。

キリンホールディングスのグループ会社で働く大島資正さん(35)。09年5月に2週間の育児休業と有給休暇を合わせて1カ月の休みを取った。準備は早かった。妊娠した妻が安定期に入ると、さっそく職場に報告。そこから、"育児熱心なパパ"をさりげなくアピールしていった。子育て中の同僚と一緒に昼食を食べながら育児の話に関心を示したり、育児雑誌を回し読みさせてもらったりした。

職場内で「この人はきっと取るはず」というイメージができあがっていき、上司に取得を告げたときには「当たり前のように受け止められ、応援してくれた」(大島さん)。

育児休業に詳しい法政大学キャリアデザイン学部の武石恵美子教授は「法律で育児休業が取りやすくなったとしても、企業が従業員に対して取得を促す姿勢を明確に打ち出し、職場の風土を変えないと、男性の取得は簡単には増えていかないだろう」と指摘する。

[日本経済新聞夕刊2010年4月7日付]

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