「伝説の教師」27年ぶり教壇に 98歳、神戸・灘中で
全国有数の進学校として知られる神戸市東灘区の私立灘中学・高校で50年間教壇に立ち、教科書を使わないユニークな授業で「伝説の国語教師」と呼ばれた橋本武さん(98)が18日、27年ぶりに灘中で授業をした。
1934~84年まで教師を務め、作家の遠藤周作ら各界の著名人を教え子に持つ。戦後、軍国主義的な記述に墨塗りをした教科書をやめ、文章の美しさにほれた中勘助の小説「銀の匙(さじ)」を徹底的に読み込む授業を始めた。
物語を追体験するために駄菓子を配ったり、語句の説明から話がどんどん脇道にそれたり。生徒の興味を引き出す授業が評判を呼んだ。
この日も銀の匙を題材にした自作のプリントを配布。よく通る声で「遊ぶのと同じように、楽しんで学べたらいい」と50人の生徒に呼び掛けた。「ところで、遊学の意味は分かるかな」と話題を広げ続け、銀の匙は読まないまま、1時間半の授業を終えた。
橋本さんは「今までもそんなもの。自分で疑問を見つけて解決できる人間になってほしい」と満足そうな表情。3年生の長村洋昂君(15)は「予想できないところに話が広がっていく」と真剣な表情で聞き入っていた。
今回の授業は「もう一度教壇に立ちたい」との希望を知った同校の担当者が、社会で活躍する卒業生らによる特別授業の講師を依頼して実現した。〔共同〕