アップル株600ドル割れ 地図誤表示などで売り
【シリコンバレー=岡田信行】米アップルの株価に異変が起きている。、9月に一時700ドル台を付けた株価がこの1カ月余で急落。10月31日の終値は7月末以来の600ドル割れとなった。最新OS(基本ソフト)「iOS6」の地図誤表示やタブレット(多機能携帯端末)「iPad mini(アイパッドミニ)」の価格、有力幹部の退任人事などで、投資家がアップルの将来に懸念を深めていることが背景にある。
31日の米株式市場でアップル株は売られ、一時は前日終値に比べて約3%安い587.70ドルまで下がり、その後上がったが、約1%安い595.32ドルで通常取引を終えた。終値ベースで600ドルを割り込むのは、7月30日(595.03ドル)以来となる。アップルの株価は「iPhone5」を発売した9月21日には一時705.07ドルの史上最高値を付けており、1カ月余で約17%下落した形となる。
急落原因の1つは、スマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)5」などに搭載した「iOS6」の地図で表示ミスが多発したこと。アップルはティム・クックCEO(最高経営責任者)が謝罪し、グーグルなど競合他社の地図を使うようにユーザーに呼びかけた。
10月29日にはiOSの開発責任者で故スティーブ・ジョブズ前CEOの"親衛隊"とも呼ばれたスコット・フォーストール上級副社長を事実上更迭。一部メディアはアップル経営陣の内部対立を報じ、将来への懸念を呼び起こした。
製品面でも懸念が強まっている。グーグルやアマゾン・ドット・コムが7型のタブレット市場で急激に販売を拡大していることに対応。アップルは11月2日に7.9型の小型iPadを発売するが、競合機よりも価格が高く、苦戦を予想する声も出ている。目標株価を引き下げる証券アナリストも現れた。
アップルの株価は、ジョブズ氏が死去した昨年10月5日には378.25ドル(米株式市場、終値ベース)だった。その後、クックCEOの新体制でも好業績が続き、上昇していた。
今後、クックCEOは2つの大きな宿題を抱えることになる。まず「iPad mini」の発売を成功させ、ブランド力の強さを示すこと。そして、次に開発する製品をヒットさせ、経営体制が盤石であることを示すことだ。それらの解が示されなければ、投資家の懸念は消えない。